思考のスパイラル ~鈴木マサカズ「無頼侍(ぶらざむらい)」全参巻


壱巻が出たとき、新聞の書評で紹介されているのを見て買った。
その書評に書かれていたことは、おおむね正しかったと思う。(確か宮本大人だったと思うけど、違ったらすいません)


毎日ぶらぶらしながら、「どっかの誰かが一ぶらにつき一両くれねぇかな」なんてことを考えている浪人、鈴森岩十郎が一応の主人公というか、狂言回し。
百両の賞金首、妹殺しと呼ばれる浪人、寛壱。
浮浪児の兄弟、紋太と健二郎。
お色気たっぷり変態欲情女親分、蛇山の藍。
藍に懸想する馬鹿の千代松。
そして、謎の人物「溝鼠」。
賞金首の寛壱をめぐり、物語は道行きを開始する。

まず、この漫画で特徴的なのは、個人の思考がどこまでも続いていく様を描いているところだ。
端役だろうと例外ではない。
何かに直面しているとき、その場と全く関係のないことをなぜか考えてしまうことがあるが、そういうのも省略されずに描いてある。
まさに死のうとしているとき、目に入ったのが天井裏から顔を覗かせているネズミだったり、近くにいる人物の口元についたご飯つぶだったり。
こと切れる瞬間まで続く思考のスパイラル。
まだ死んだことはないけど、死ぬときはそんなものなのじゃないかと思う。
紋太の「糞をしてる時に殺されるのだけはごめんだな」という呟きに、激しく同意する!(当たり前?)

しかしこの岩十郎(壱巻表紙参照)、めちゃくちゃ面白い。
あんたのその根拠のない自信はどこから来るの!?
本気で言ってるんだもんな…
憎めなくて、いつも命拾いしている。
強そうな名前がついてるけど、完全に名前負けだ。


彼等のへんてこな道行きもやがて終盤を迎え、一応の決着をみる。
この世は無常、という感じのラストだったので後味はそんなによくないが、とっても面白かった。
生き残った者……紋太や千代松が何らかの成長を見せているのに対し、岩十郎は始めと終わりで全く変わっていないように見える。
ぶらざむらいは、またぶらぶらを始めるのである。


この人の、文章だけの作品も読んでみたい。
でもこの絵柄は嫌いじゃないので、漫画の方がそりゃうれしいけども。


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