ゴールはまだ先だ ~作・北沢未也/画・秋重学「D-ASH」全5巻

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秋重さんの漫画が好きで、この人の作品をもっと読みたいと思い続けてきたのだけど、昔の作品は本屋になかったりするので、半ばあきらめていた。
そしたら、毎度お世話になりまくりの赤魚さんのブログでこの「D-ASH」が紹介されたので、もう読みたくてたまらなくなり、初めてe-ブック○フを利用いたしました。(実際の古本屋では1巻しか見つけられなかった)
コンビニで受け取れるのがすごい便利。手数料がちょっと高いけど。


秋重さんが描いているというだけで個人的には五割増の評価になるのだけど、それを差し引いても、ストーリーがとっても良かった。
足の速い少年・司が、100m走の名スプリンターになるまでの十数年間のお話である。
忘れられずにいるのは、小5のときに転校していった足の悪い女の子、紗英。
別れ際、「大人になってまた会ったらSEXしよーぜ!」という約束をした2人は、21歳の春に再び出会う。


5巻しかないので時の流れがかなりスピーディーだけど、だらだら続くよりはよっぽどよかった。
昔仲が良かった人と疎遠になったり、また仲良くなったり、長いつきあいだからこそ相手の人柄にうんざりしてしまったり、そういうのがリアルだった。
居酒屋「かっちゃん」で、くされ縁4人が大ゲンカをしたあと、びしょぬれのまま並んで座っているシーンが好きだ。


ヒロイン紗英ちゃんがとっても魅力的。
何て言うか、うわべだけのかわいさじゃない感じ。
小学生のときの紗英ちゃんも、司と結ばれてバカップルと化した紗英ちゃんも、男前で逞しい紗英ちゃんも、みんな良い。
原作者の人は、名前の字面から勝手に男の人だと思いこんでいたけど、女の人なのかもしれないな。
同性の目から見てもかわいいと思えるし。


三木のラストレースは、泣いてしまった。
感情の見えにくい細い目と、ライオンのたてがみのような髪と、三木のモノローグすべてが切なかった。
駅のホームに司が来なくても、きっと三木は一人でああしたんだろうけど、最後に2人が会うことができたのは、神様か何かの存在が、三木にあげたご褒美なんじゃないか、ご褒美という言葉も何か違う気がするけど、そんな風に感じた。
「神様」なんて言葉が思い浮かんだということはつまり、作り手の意図を感じなかったということで、それはこの作品がフィクションとして優れていることの証左なんだと思う。
数年後のシドニーで、司が三木の幻を見るところでまた泣いた。


かけっこはいつもビリの方だった鈍足の私が体験することのない世界、到達できない世界に、彼らは住んでいる。
それでも、紗英ちゃんみたいに、一緒に息を止めて心を走らせることはできるはずなのだ。


それにしても、秋重さんの描く漫画はなんていいんだろう…。
走る人間の姿が本当に美しい。
原作のついてない作品をまだ読んだことがないから、秋重オリジナルはどんななのかもすごく興味がある。
昔の作品、新装版で出ればいいのに。
でもこの「D-ASH」は、表紙のカバーがカラフルで背表紙を並べると色合いがキレイなので、このままの装丁がいいな。

この記事へのコメント

  • 赤魚

    こんばんは☆
    私も運動神経があんましよろしくないので彼らのような世界を一生みる事が出来ないんだろうなぁと思うと、漫画内ですが切ない気持ちになりました。
    自分は絶対にわかる事のない世界なんだろうなぁ…と。

    秋重さんオリジナルの漫画はひとつあるみたいなんですが探しても探しても見つかりません…
    是非読んでみたいですよね!

    それでは☆また
    2007年07月27日 21:53
  • 三森紘子

    赤魚さんへ

    こんばんは!コメントありがとうございます♪
    ほんとにそうですよね…。でも、漫画の中だけでもそういう世界を追体験できるので、これからも漫画を読み続けようと思います(笑)

    それでは!
    2007年07月28日 22:34
  • 山本

    自分は昔、原作者と付き合ってました。マンガの司のモデルは自分だと、彼女は言ってました。全然、似てないですけどね(笑)。
    2013年08月07日 13:59
  • 三森紘子

    山本さんへ

    コメントありがとうございます。
    わー、それはすごい!! 漫画に自分(がモデルとなったキャラ)が登場する感覚なんて、なかなか味わえないですよね。
    2013年08月12日 15:33

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