世界は開いてる ~江平洋巳「白いバラの乙女」

0805

本屋のコミック売り場に立ちつくして、途方に暮れるときがある。
「こんなに膨大な数が出版されている漫画の中から、いったいどれを選んで読めばいいの?」と、ふと思ってしまうときだ。
そんなときは、背表紙を見たり、棚からちょっと抜き出してみたり、裏表紙のあらすじを読んだり、上の所から中身をがんばって覗いてみたり、立ち読みOKのものを片っ端から読んでみたりする。
そういうことを繰り返して、売り場を何度もうろうろ巡回するのだけど、どれが面白いのかわからなくなってしまって、買う本がなかなか決まらない。
結局何も買わずに店を出てしまうこともある。
かと思えば、いつもなら買わないような本を躊躇なく買ってしまうこともある。
何でなんだろう。


そういう症状に見舞われながら、今回買ったのがこの「白いバラの乙女」である。
この作者さんのコミックスは以前からちらほら見かけていて、ちょっと気になっていたけど、全然知らない漫画家さんだし、手を出さずにいた。
そんな中からこのタイトルを選んだ理由は、ひとえに表紙の絵の「伏し目」にヤラレてしまったからだ。
あと裏表紙に書いてあった「ミッション系お嬢様学校」とか、そういうのが案外と好きなので。
カッチリした制服もたまらんですね。


お嬢様ばかりが集うブランド校である、聖母ノ丘女学院。
高等部から入学してきた「外部生」の浜口美子は、女ばかりの園に嫌気がさし、単独行動をしている少女。
ある日、地元名家の娘で「学園の女王」と目される美少女・高宮月子と知り合いになる。
友だちになってほしいと言われ舞い上がる美子だが、それは彼女の策略でもあった。


「嗚呼、お姉様」とか「わたくしたち今日から姉妹になりましょう」とか、そういう話なのかというと、全くそんな話ではない。
(↑百合というジャンル名から私が勝手に連想した台詞群…あんまりくわしくないので適当)
美子と月子が互いに惹かれあう話ではあるけど、並んで寄り添うのではなく、向かい合うのですらなく、二人は全く別々の方向を見つめているような気がする。


その美しさと権力で、学園に君臨する月子。
誰もが彼女の顔色をうかがっている。
彼女は孤高である。
唯一心が通いあったと思えた少女は、別の少女と心中未遂をしてしまった。
彼女は再び一人になり、自分の分身を求める。
「月子さん そんな人どこにもいないんだよ」
「じゃあなぜ 月子さんは今 ひとりぼっちなの?」
そう、美子は言う。


月子が美子に関わったのは、単に陥れるためだけではなくて、どこかで美子に期待を寄せていたんだと思う。
冷たくあしらったり、拒絶したりしながらも、「もしかしてこの子なら」と、祈るような気持で退屈な毎日を過ごしていたんだろう。
美子がこういう性格の子だからなー。私ならなかなか立ち直れない。


これからも学園で「恐怖政治」を敷いていく、と決意した月子の笑顔の、なんて美しさ。
月子は月子の、美子は美子の道を、別々に歩み始める。


何年後かには、園田さんみたいに「あー恥ずかしい…」って笑いながら赤面しちゃうような季節なのだと思う。
けれど、きっと何度も、懐かしさと甘美さを伴いながら思い出すんでしょう。彼女らは。


というわけで、今回の表紙買いはよい買い物でした。
あと、百合という新しい世界に興味が出てきました。これ自体は百合物じゃないと思うけど。


(次の記事に微妙に続く)


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