話を聞かせて ~劇団ひとり「陰日向に咲く」

0831

図書館で予約をしたのは、一体いつのことだったやら…
予約待ちが数百人規模であったことは覚えている。
待ちすぎて発酵しそうになった頃に、確保のお知らせがやってきた。
というわけで、ようやく読むことができました、「陰日向に咲く」。


メディアが皆絶賛するのも納得できた。
私はどちらかとあえて言うと、大衆的なものには反発し、ややマイナーなものを愛好する傾向にあります(もちろんその限りではありませんが…)。
「タレントが書いた本」というのは大衆的の最たるものだという印象がどうしてもあって、自然と点が辛くなってしまう。
にもかかわらず、この作品は本当に「面白い!」と思って読むことができた。


最初のほうは、「劇団ひとりが書いた」というのが前提にあって、彼の顔を脳裏にちらつかせながら読んでいた。
けれど、次第に脳裏の顔は消えていき、ただひたすら物語に没頭している自分がいた。
もし「劇団ひとり」の名が伏せられて、無名の新人の処女作だと思って読んだとしても、私は今と同じ感想を抱くんじゃないだろうか。
その場合、まず読もうとするかどうかが疑問だけど、でも読んだとしたら、きっとそうだと思う。


やっぱりずっと一人芝居やってたからなんだろうなぁ、誰かになりきって誰かの人生を紡ぐのがものすごく巧い。
達者だし、深い。
主人公がそれぞれ違う短編集でありながら、各話が少しずつだけリンクしているという、その体裁もめちゃめちゃ好み。
「Aが見ている世界」と「Bが見ている世界」は違うものだ、という当たり前のことを、フィクションで再確認するのが大好きなのです。


「拝啓、僕のアイドル様」の自意識過剰なところとか、「ピンボケな私」の暴走一直線なところとか、すごい気持ちがわかって、なんというか「生まれ・立場・時・場合その他もろもろが違えば、私もこうなっていた可能性は大いにある」とものすごく身にしみてしまったりした。
その他にも、オレオレ詐欺を中途半端にやろうとしたがために何度も同じ家へ電話をして、なんかグダグダなことになっちゃってたり、細かいところでニヤニヤしながら読んだ。


これが処女作って、やっぱ純粋にすごいと思うよ。
もともと劇団ひとり好きだったけど、さらに火がついちゃうよ。文士タイプにときめくよ。似合いそうだな、文士の格好。丸眼鏡とか。
とりあえず、もっと書いてほしい。
お話もっと聞かせて。という感じ。


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