どこまでも浮遊 ~ジュディ・バドニッツ著/岸本佐知子訳「空中スキップ」

0911

以前エッセイを読んで度肝を抜かれ、一気にファンになった岸本佐知子女史。
女史の本職は翻訳家なので、一度はそっちのほうも読んでみたいと思っていた。
図書館を漁り、タイトルや表紙で面白そうなのを選んで借りました。


ちなみにエッセイの感想はこちらこちら


普段はそもそも外国文学というのをほとんど読まない。
なぜかというと、原著→翻訳→日本語版というプロセスがどうしても引っかかるからである。
結局、訳書って本来の作品、オリジナルじゃないんじゃん? 訳者のさじ加減ひとつで印象も変わっちゃうだろうし? とかってどうしても斜にかまえてしまう。
かといって語学力は皆無なので、原著を読めるはずもなく。
日本人の書いた文章ばかりを読んできました。
もったいないことだと思いつつも。


でも、今回は違う!
何しろあの岸本さんが訳した小説なのだから、ただの小説ではないに違いない。
そう思い、かなり期待して読み始めたのだが、期待が裏切られることはなかった。


「空中スキップ」は、ジュディ・バドニッツが26歳のときに発表した短編集。(私とそんなに歳が変わらないのにびっくり)
それぞれ毛色の違う話が収められているが、「普通の」話はひとつとして無い。
少女が飼い始めた犬は犬ではなくて着ぐるみを着た男。母親に心臓をよこせ、と叔母達から責められる息子。他の人には見えない、百ポンドの巨大な赤ん坊がキッチンを徘徊。皮膚病にかかった妹はカサカサの肌がこぼれ落ちていき、やがてあとかたもなく消える。
まさに「空中」で「スキップ」をするようにとめどなく浮き上がっていく作者の妄想力。
時にグロテスクに、時にブラックに。常人では考えつかない展開に舌を巻き、その中に隠された真実に胸を衝かれながら読む。
”FLYING LEAP”を「空中スキップ」と訳した岸本女史のセンスもすばらしいと思う。


チアリーディングのためなら命も捨てる少女たちがコワすぎる「チア魂」、建物の上から飛び降りたいと夢想する女を描いた「飛ぶ」、ラストのどんでん返しがいっそ痛快な「お目付け役」、老婦人の××のために髪をセットする話「パーマネント」、パンを焼くように赤ん坊を作る『赤ん坊屋』の話「ハーシエル」などが特に好きだった。
中でも「パーマネント」は、はっきりと明言していないのにだんだん読者にそうと気づかせていく書き方がすごいと思った。優れたショートショート。


変なもの読んじゃったなぁ、というのが全体的な感想。
でも面白かった。読んでよかった。
ありがとう岸本さん。貴女のおかげで外国の小説を読めました。


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