何だか酷く男が羨ましくなつてしまつた。 ~原作・京極夏彦/作画・志水アキ「魍魎の匣」1巻

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「魍魎の匣」が漫画化ときいて、よっぽど「コミック怪」を買おうかと思案したものですが、映画化に合わせて単行本になるはずだと踏んで待っててよかったです。


京極堂シリーズの中で一番好きなのがこの「魍魎の匣」です。
冒頭とラストが素晴らしい。同じ理由で「絡新婦の理」もその次に好きです。
とはいえ、私がこの小説を読んだのは高校生の頃なので、リアルにかなりの年月が経ってしまってます。
なので、原作のイメージ自体がずいぶんおぼろげになっているうえでの感想だということを前提にお読みいただけるとうれしいです。


時代は終戦直後、ある夜一人の女学生が電車に轢かれるという事件が起こる。
偶然居合わせた刑事の木場はなりゆきで初動捜査に加わるが、その女学生――柚木加菜子に同行していた友人・楠本頼子の言うことは錯乱気味で要領を得ない。
病院へ運び込まれた加菜子の安否を気遣うなか、現れたのはそれぞれ関係者と保護者を名乗る男二人、そして加菜子の姉で元女優の柚木陽子という女性だった。
一方、三流小説家の関口巽は、出向いた編集部で久保俊公という男と出会う。


うーん…このあらすじでは、これがどういう話なのか伝わりにくい…。
作画の志水アキさんの漫画を読むのはこれが初めてなのだけど、とても達者で魅力的な絵を描く人だと思う。
そして原作に対する愛情がものすごく伝わってきます。丁寧に描いているのがわかる。
まず冒頭の、箱の中の少女の愛らしさと妖艶さに見惚れ、厳めしい外見とは裏腹に深く思索する木場の旦那の内面に心を奪われ、鳥口君のひょうきんさや敦子君の可憐さに微笑み、巨大な「箱」のように見える医学研究所のおどろおどろしさに戦慄し。


特に、頼子が憧れる少女加菜子の美しさはすごい。吸い込まれそう。
反対に頼子が激しく嫌悪する母親はとても醜く描かれていて、この対比はえげつない程です。頼子の目を通しての描かれ方だから余計なんだろう。
美しい加菜子に魅了され、自分の出自や日常の醜さを嫌い、反動のように完璧な美を加菜子に求める。
頼子の少女らしい純粋さと狂気が、絵にビシビシと表れていて怖いくらいだ。
早く表紙の陰陽師の方に憑き物おとしをやっていただきたい。


それから、私の中の関口君はもっともっさりした感じの冴えない人だったんだけど、志水版の関口君はずいぶん小奇麗で、うっかり好きになってしまいそうです。
言うほどお猿顔でもないし。え、もう全然ステキだよこれ。守備範囲だよ。
自分に自信のない関口君萌え。人と目を合わせられない関口君萌え。


そして表紙のやたらカッコいい陰陽師の方は、栄えある第1巻では1コマしか登場しません。
榎さんに至っては出番ナシ。(というかそもそもこの話に出番ちゃんとあったんだっけ?)
長いお話のほんとに最初の部分なので、しょうがないのですけどね。


というわけで、私にとっては何の不満もない出来映えのコミカライズでした。
2巻が出るのはだいぶ先になりそうなので、ここらで小説のほうも読みなおしてみようかなぁ。
どうしよう。ノベルス版と文庫版と分冊版、どれを買ったらいいんだろう。
映画はまた原作とは違うものになってるらしいので、それはそれで楽しみです。
だって主題歌が東京事変だもんね。もうそこからしてイメージがちょっと違う。
そのうち観に行きたいです。


ああ、それにしてもこの関口君は本当に良い。


この記事へのコメント

  • 誠一郎

    初めまして。初投稿します!!
    僕も京極ファンなので、同じような感想を
    blogに書いたのですが、確かに丁寧に描かれていて
    作品に対する愛が感じられましたネ。
    特に「生まれ変わり」「転生」の表現が素晴らしかったと思います。京極先生は読者が100人いれば100通りの京極堂がいると仰っていましたけど
    この作品は見事にイメージの最大公約数としての
    描かれ方だと思いました。
    そういえば確かに榎さんいませんでしたよね。
    てっきり忘れてました。
    2007年12月20日 20:14
  • 三森紘子

    誠一郎さんへ

    はじめまして!コメントありがとうございます!!

    なるほど!確かに「イメージの最大公約数」という表現がふさわしいですね。
    これだけたくさんの人間に読まれている人気作品を漫画化するのはとても難しいことだと思うのです。
    それがこういう素晴らしい出来になっているのは、志水さんの漫画家としての力量ももちろんですが、何よりも原作への愛情の賜物なんだろうなと思います。
    続きがとっても楽しみですね! 榎さんの出番も(笑)
    最近はめっきり京極先生の新作を追えてないんですが、これを機会に再開したいです。

    また誠一郎さんのブログも覗きに行かせていただきますね。
    それでは☆
    2007年12月21日 19:29

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