この世紀の一戦を目に焼きつけろ ~つの丸「みどりのマキバオー」全10巻(文庫版)

0217

んあー、ついに揃えたのねー!


と、たれ蔵のモノマネのひとつでもしたくなる。やっと念願叶ってマキバオーをオトナ買いできました。
ほんとは通常のコミックス版がほしかったんだけど(カバー絵が好きだから)、残念ながら重版未定のようなので、文庫版を買いました。
まあ経済的にも物理的にも、文庫版のほうがコンパクトだからいいか。


今頃になって何故マキバオー!? という感じだけど、ハマったときが欲しいときなのだからしょうがない。
それに、続編「たいようのマキバオー」が現在連載中なので、あながち旬でないとも言えないのではないでしょうか、ね? ね?
かくいう私も、「たいよう」がきっかけで「みどり」を読み出したクチです。
アニメ化されて大人気だった10年ほど前、アニメも観てたし、テレビの競馬中継までいきなり観だすくらいハマったけれど、そういえば原作を全巻通して読んだことがなかったなぁ…と思い。
さっそく漫画喫茶で読んで号泣(個室でよかった)。これは買うしかない、と思い今に至ります。


有名な作品なので、読んでる人はとっくに読んでるだろうし、読んでない人はたぶんこれからも読まないだろうから、今さら「皆さん読んで!!」とオススメしたいわけではありません。
「こんなん読んだ!面白かった!」と吐き出したいだけです。(それを言うなら他の記事もみんなそうなんだけど)
ただ、この名作の絵柄だけを見て「下品そうなギャグ漫画」と誤解してしまってる人がもしもいたら、とってもとっても人生損をしているように思います。まあ、主人公の名前が「うんこたれ蔵」だというのは相当だとも思うけど…。この時点でダメな人もいるのでしょう。
その名の由来通り、うんこたれまくり、鼻水たらしまくりなたれ蔵ことマキバオーが、とにかくカワイイ。
まだ生まれたての頃の、おかーちゃんおかーちゃんとミドリコの後をついて回るたれ蔵はたまらんアホカワイさです。
そんなアホの子だったたれ蔵が、競走馬としてどんどん力強く成長していく様子にはグッとくる。顔つきまで全然違います。


そんなたれ蔵に騎乗するのは、森のねずみだったチュウ兵衛親分と、落馬事故で愛馬を失った経験から普通の馬に乗れなくなってしまった騎手・山本菅助。
強気な自信家で常にたれ蔵たちのリーダーシップをとり、いつしか身も心も騎手になっていったチュウ兵衛。
事故でもう二度とレースに出られない体になりながらも、勝ちたいという自分自身の気持ちを抑えきれずに、命がけで日本ダービーに挑む。


対して、気弱で控え目な性格の菅助。
レース終盤、疲弊しきったたれ蔵の体にムチを入れることができず、泣きながら自分の足をムチで叩き続けたほど優しい優しい菅助は、チュウ兵衛とはまた違う形でたれ蔵を支えてくれる存在だった。
チュウ兵衛と菅助、二人(正確には一人と一匹)がたれ蔵に乗ることでちょうどバランスが取れていたのだが、ダービーでの栄光を手にした直後、チュウ兵衛の死という悲劇が訪れる。


チュウ兵衛の最期にはもちろん涙がちょちょ切れるほど泣きましたが、その後の有馬記念で菅助がまるでチュウ兵衛のような乱暴な言葉でマキバオーを叱咤したシーンでも、感動で胸が熱くなりました。
チュウ兵衛の魂が、菅助の心に確かに存在していると感じられた瞬間。
死んでからもずっと、マキバオーたちの力になり続けたチュウ兵衛。こんなかっこいいねずみを他に知らない。


飯富兄弟も好きだ。
二人とも誉められた大人ではないかもしれないけど、マキバオーを心から応援する姿が好きです。歳とってからも兄弟仲いいのもいいな。
虎にいを実写化するなら泉谷しげるしかいないと思う(笑)


そして、マキバオーとしのぎを削り合うライバルの馬たち。
どいつもこいつもかっこいいんだこれが…。馬の描き分けがすごい! つの丸先生は実はめちゃくちゃ絵が上手いよ。
三冠相続人・アマゴワクチンと、地方の星・サトミアマゾンが好きです。


アマゴワクチンがケガで大事なレース出場を断念したとき、たれ蔵たちには落ち着いた顔を見せておきながら、一人になったとき激しく悔しがっていた姿にキュンとした。
だからこそ、最後のチャンスに賭けた一戦での勝利はすっごく嬉しかった。あと、脚の先のほうがフサフサッとなってるのが好き。
サトミアマゾンが、中央最後の挑戦である菊花賞のとき、いつもの覆面みたいなの(メンコとブリーカーというらしい)を取って素顔を見せていたのにキュンとした。
あと、わかりにくいけど仲間思いなところが好き。
こんなふうに、かっこいい馬ばっかり出てくるので思わず恋しそうになります。馬に。


恋といえば忘れてはいけない! 彼なしにこの作品は語れない!
マキバオーの最大のライバル、漆黒の帝王・カスケードオオオ!!!
決して見せかけではない王者の風格と誇り、折れない心、誰よりも熱い血を持った、最高最強にかっこいいグレートホース!
ダービーのときのチュウ兵衛に対する振舞いに、真の漢の姿を見ました。
最後の試合となった有馬記念、「終わったな…カスケード…」と騎手の服部に声をかけられ、「ああ 終わった」とつぶやいたカスケードの、何かを全うした者だけが見せることのできる満ち足りた表情。
ほほほ、ほほほほ惚れるしかありません!!!
種類の違いなんて関係なし!(笑)
チュウ兵衛とアンカルジアだって、絶対両想いだったと思うよ。


そしてそして、この作品の特徴といえば「馬が人間の言葉を喋る」という設定。
冷静に考えてみれば「ありえねーだろ!」という設定なのだけど、これが非常に生きている。
馬が喋る、つまり人間との意思疎通がはかれることで、馬の内面描写や騎手との絆を深く表現することができ、大変なドラマ性が生まれているように思います。
これは、つの丸先生がギャグ漫画を描いてる人だったからこその柔軟な発想だったのではないだろうか。
シリアスな競馬漫画を描こうとして普通、思わないもんね。馬に喋らそうとか。


さらにさらに、すごいなぁと思うのは、最盛期を過ぎてからのマキバオーまでを描ききっていること。
お話のピーク、一番盛りあがったのはやっぱり有馬記念の世紀の一戦、第一部終了あたりだと思う。
けれど物事には何でも盛衰というものがある。いつまでも頂点であり続ける者はそうはいない。
世界の壁に敗れ、足のケガで競走馬生命を絶たれそうになりながらも復活、しかし全盛期の走りには及びもつかない、という状態のマキバオーは、それでも若い馬に囲まれながら挑戦することをやめない。


エスペランサに、ブリッツに、競馬界の明日を担う若馬たちに世代交代して受け継がれていく名血、それはすなわちどんなときでも挑戦し続ける姿勢なのだということを、マキバオーは身をもって教えてくれた。
そしてまた、みどり牧場で新たな命が育まれます。
マキバオーによく似た犬のようなその仔馬の挑戦は、まだ始まったばかりなのだ。


勝負する勇気を、絆を、挑戦することの尊さを、感動を教えてくれてありがとう。
小さな体にでっかい心を持った、たれ蔵に出会えてよかったよ。



なんだか長くなってしまった。読んでくださった方お疲れ様です。
最後に出てきたマキバコの子、つまりたれ蔵の甥=ヒノデマキバオーの活躍が見られる「たいようのマキバオー」も、そのうち買い揃えるんじゃないかと思います。


で、ちょこちょこ挿入されるギャグ部分も私非常に好きでして。
その最たるキャラクター・ベアナックルは登場するたびに笑えてしょうがなかった。
たれ蔵とカスケード以外で唯一表紙に出てきてたりもするし。いやいや、お前はほんとにオイシイやつだ。


この記事へのコメント

  • タマーキン

    本当にいい作品ですよね。マキバオー。
    有馬記念後のどんちゃん騒ぎの中、マキバオーが一人チュウ兵衛親分の墓石に勝利を報告するシーンが特に大好きです。
    2009年12月02日 01:44
  • 三森紘子

    タマーキンさんへ

    はじめまして、コメントありがとうございます! マキバオー感想へのコメント、うれしいです。
    そのシーンは私も大好きです!
    みんなと一緒にどんちゃんするのもいいけど、やっぱりチュウ兵衛親分と二人で静かに語り合いたかったんでしょうね。マキバオーが大人の男(オス?)に見えた一瞬でした。
    2009年12月03日 18:45

この記事へのトラックバック