ひぐちアサ「おおきく振りかぶって」10巻感想その2(崎玉編)

その1はこちら


その2は崎玉成分過多です、というか崎玉のことしか書いてありません。(笑)


☆ネタバレご注意☆
・イッチャンの挑戦
外野出身の崎玉のエース・市原。
投手を始めてまだ半年、女房役の大地も捕手の経験値は低い。ともに未熟なバッテリー。
配球を組み立てて、アウトとって、打たせて歩かせて。やることはたくさんある。


(ピッチャーなんて つかれるし責任ばっか重いし もうやりたくねェ!)
(野球ってシンドイなあ!)
(まあ それでも一番いい球 投げるけど!)



自分が投げなきゃ始まらないし終わらない。負担を感じながらも、イッチャンは「一番いい球」を投げ続ける。
勝ちたいから、今年が最後のタイさんと一緒に長く野球をしていたいから。
だから余計に、タイさんの甘さに不満を募らせる。


(3年(あんた)がそれじゃあ 全員がそうなっちゃうんだぞ)
(だからうちは強くなんねーんだよ!)



マウンドにしがみつく三橋とは対照的なように見える市原。
なりたくてなったわけでは多分ないであろう投手というポジションで、それでも自分にできるかぎりの仕事をしようとする。
捕手として機能しているとはまだまだ言い難い大地には頼れない。マウンドに立って、考えて実際に投げるのは自分一人。一人で考えられることには限界がある。
シンドイポジション。貧乏くじのポジション。だけど。


(投手に未練とか全然ねーけど マウンドには)
(他じゃ味わえない”何か”が 確かにあんだよな)



自分が投げて終わり、じゃないんだということ。
自分一人が勝負を背負ってるんじゃないということ。
タイさんに向けて吐き出してしまった、自分の本音。
それを受けとめてくれたタイさんの言葉が、最後の最後で「負けて当たり前のチーム」から「勝ちを目指していこうとするチーム」になれたことが、本当にうれしかったから。
9回まで行けなかったことが、本当に悔しかったから。


「シンドイ」「もうやりたくねェ」
そんなふうに言いながら、イッチャンはなんだかんだで投手をやめたりしないんじゃないかな。
西浦と戦うことで、自分たちが「モノを考えずに野球してきた」ことに気づいた試合。
今できることは増えなかったけど、今からできることは見えてきた。この夏はダメだった、でも次は。
イッチャンの挑戦はきっとこれからだ。



・大地の開眼
体格とセンスに恵まれている大地は、5番打者で一年生ながらチームの主軸。
あまりに高い打率と打撃力のためマークされ、対西浦戦では徹底した敬遠策をとられる。
打撃は封じられ、時には肩の良さでチームのピンチを救うものの捕手としての能力はまだ未熟。
力を充分に発揮できないまま迎えた最終回で、ようやく大地への敬遠策は解かれる。


センターフライに終わった最終打席。
三橋と大地の一度めの勝負は、三橋の勝利だった。


(最後の打席 ホームランできると思ったんです)
(それが悔しくて)
(もっと 一生懸命野球をやりたい!!)



今まで大地は、何も考えなくても野球をやってこれた。
ボールを打つのがただ楽しくて、それだけで結果がついてきた。
でも力と勢いだけでは勝てないことがわかって、無意識ながら自分の力に驕ってたことを思い知る。
オツムの弱い大地なりに、今以上に強くなることを誓った試合。


消耗し、酷使した左腕を冷やすイッチャンの姿を見て、大地の中に「じわじわ」と生まれたもの。
「オレに期待されてるのはホームラン打つことなのに、今日はできてないからダメだ、もっとがんばらなくちゃ!」
「ピッチャーがこんなにがんばってるのに、キャッチャーのオレにももっとできることがあるんじゃないのか?」
まだはっきりとした言葉にはなってないかもしれないけど、それはこんな感じのことかなぁと思う。


ちゃんと「モノを考えて」野球をするようになった大地が、どんな末オソロシイ選手になるかと考えただけでドキドキします。
ま、オツムの弱さはそう簡単に治らなさそうだけど(笑)
「最後まで試合 しような!」というタイさんの言葉の重みに気づいてないし(笑)。



・タイさんの最後の夏
「3回戦まで来られたことにすごく満足してる」というタイさんの言葉は、それこそ田島に言わせれば「満足してんなよ」となりそうだけど、紛れもない本当の気持ちなんだろう。
たった一人で続けてきた部活。辞めていく部員が多い中、今のチームメイトが今日まで自分についてきてくれたこと。彼らの本音を聞けたこと。
大地が入ってきて、勝利を狙えるんだと夢を持てたこと。最後まで攻めのバッティングができたこと。


厳しく高みを目指すことじゃなく、みんなで「野球ができる」という、一番初歩的で一番大切なことを一番望んだタイさん。
その初歩的なことすらできなかった過去があるからこそ、今の幸せをかみしめられる。
その姿勢がイヤだったイッチャン。だって勝ちたいし強くなりたいと思うのは当然のことだ。
確かに、チームの主将がこんなふうに思っているようでは勝ち進めるとは思えない。西浦と対戦しようがしなかろうが、遅かれ早かれ負けていたんだろう。
でも、最後の一人になってもやめてしまわないで野球部をつないできたタイさんは、それだけで主将と呼ばれるにふさわしい。


タイさんが引っ張ってきた崎玉野球部は、これからもっともっと進化していくはず。
その土台の一端となれたことを、タイさんは誇りに思っていいと思います。
タイさん、お疲れ様でした!



・未完の大器、崎玉高校野球部
3回戦で敗退となった崎玉は、まだまだ「未完成のチーム」だったんだなぁという感じでした。
崎玉が「チーム」になってくのは、これからなんだと思う。
勝つ喜びと負ける悔しさを知った彼らが、びっくりするくらいの成長を見せてくれることを信じてる。


力の差、技術の差、経験の差、いろいろあるけど、チームに優劣の差なんてものはないんだと思います。
どのチームもみんないいチーム。


これからも全力で、崎玉高校野球部を応援していきたいです!
「成長した大地達」を、ひぐち先生、いつか描いてくださいね~!





これで終わりじゃないぞよ
もうちょびっとだけ続くんじゃ(by亀仙人)


というわけで、もうちょっと感想続きます~


その3はこちら


この記事へのコメント

  • みお

    三森様

    イッチャンのモノローグがいちいち泣けて本当に困りました(グスン)私、おお振りに出会うまで野球は「普通」に見てるだけでしたが、本当に、ほんっとに「色々」考えながらやってるスポーツなんだって毎回気付かされます。バッテリーの意思疎通が出来てないって、本当にしんどい事なんですね…三星時代の三橋と重なって、崎玉戦はイッチャンの心情を考えると辛くて辛くてしょーがなかったです。

    そんでまたタイさんがいいんだ!!(落ち着け)イッチャンが思わず吐き出してしまったあのタイム以降の崎玉ナインの空気が本当に好きでした。「オレのできる最高のプレーを…」と言うタイさんの決意と、「少しでも長く試合を…」って言うイッチャンの想いと…お互い口にはしてないけど、それは崎玉ナイン全員に伝わってたと思うんです。

    どーしよーーー!!私ってば崎玉びいきになってんじゃん!!って途中で慌てましたよ!(苦笑)いやもう、これこそ【おお振りマジック】です(そんなモノはない!)何でですかね!?(知るか!)相手校まで応援…してるんですよ、毎回!!(笑)イヤ、「美丞は除く」かなぁ…(苦笑)美丞はさぁ…モゴモゴ…

    三森さんの最後の「チームに優劣の差なんてものはない」で思わず涙…ホントですよね!イイ試合見せてもらいました。タイさん、本当にお疲れ様でした。そしてひぐち先生!また崎玉ナインに会わせて下さいね!!
    2008年05月27日 11:28
  • 三森紘子

    ●みおさんへ

    イッチャンのモノローグ…ほんと泣けますよね!イッチャンはイッチャンなりに、いろんなこと考えて、不満とかもあるけどのみこんで、自分にできることを全力でやってる姿に胸を打たれました。
    タイさんも大好きです!厳しくできない甘いキャプテンでも、タイさんは正真正銘みんなが認める崎玉のキャプテンなんだなあと思います。じゃなかったらみんなついてこないですよ。最後の試合になるからって泣いたりしないですよね!

    【おお振りマジック】にかけられっぱなしです、私も!そして解いてほしくなんかない!(笑)おお振りに出てくるライバル校って、「対戦相手」ってだけで「敵」じゃないんですよね!立ち位置が違うだけで、同じく目標を追いかける球児なんですよね!
    >イヤ、「美丞は除く」かなぁ…(苦笑)
    うん…まあ…ね、美丞はいろいろとありましたから…(笑)

    どの試合もよいですが、崎玉戦はほんとに素晴らしかったですね!
    熱いコメントありがとうございました☆
    2008年06月01日 23:05

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