しなやかで、したたか ~松村栄子「Talkingアスカ」



かわいい話。って言ったら小馬鹿にしているみたいに聞こえてしまうかな。そうではない、そうではないのです。
主人公たちに対して、じんわり愛情を抱きたくなる。そして、かわいいけれどもシビアな目線が根底にずっとある感じが素敵。


表題作の「Talkingアスカ」は、高校生のアスカが電話の向こうの友だちや家族と会話をするお話。
会話をしている相手は登場せず、全編アスカの語りのみで構成されているのだけど、これが飽きない、面白い。
だらだらとどうでもいいことをしゃべり続けているだけにみえて、アスカが実は観察力に富み、自分のものさしを持っていて、気の優しい、さらにバランス感覚の優れた子であるということがわかる。
解説では「柔軟」と表現されていたけどまさにそう。しなやかで、したたかなのだ。
アスカはとても魅力的な子です。


巻頭に収録の「悩める女王さま」も、すごく好きだった。
かわいくて勉強もできて人気者で、「おーほっほ!」と笑いながら女王さまごっこをしている小四のサヤカ。でも女王さまにだって悩みはある。
なんというかもう本当にかわいい話です。最後で「おーほっほ!」じゃなくて「うふふ」と笑ってるところなんて最高にかわいい。
でも、おとなになったら自分はきっとブスになるから、今のうちにおむこさんを見つけておかなくちゃ、なんてセツジツに思ってる女王さまは、やっぱり目線がシビア。


どうでもいいけど、女王さまやお嬢さまの笑い方はなんで「おーほっほ!」なんだろう。
普通は笑うとき「オ」行なんて出てこないよな…。意識的にしてないとこの笑い声は出ないよな。
誰が一番最初に始めたんだろう! 気になる!


この作品はピュアフル文庫というところから出てるんだけど、いろいろと気になる作品が多いレーベルです。
後藤竜二の「12歳たちの伝説」とか、佐藤多佳子の「スローモーション」とか、「夏休み。」「告白。」等のアンソロジーシリーズとか。
この本の巻末の広告ページに載っていた、石井睦美「卵と小麦粉それからマドレーヌ」と、木地雅映子「氷の海のガレオン/オルタ」も新たに気になりだしました。


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