強制力 ~辻村深月「太陽の坐る場所」



一気読みしたあと、正直落ち込みました。
胸の中におもりが落ちたよう。なかなか溶けてなくならないおもり。忘れ難い作品です。


高校卒業から10年。クラス会に集まった男女の話題は、女優になったクラスメートの「キョウコ」。
彼女を次のクラス会へ呼び出そうともくろむが、「キョウコ」と向かい合うことで思い出される、高校時代の「幼く、罪深かった」出来事―。よみがえる「教室の悪意」。
28歳、大人になってしまった男女の想いを描き、深い共感を呼び起こす傑作ミステリー。辻村深月の新境地。
(amazonの内容紹介より)



辻村さんは1980年生まれで、この本が出たのが2008年。
28歳になった辻村さんの実際に感じたことが、少なからず書かれているんだと思う。
きっと、デビュー当時の彼女には書けなかった話なんだと思う。
確かに、「新境地」といっていいかもしれない。


辻村深月の小説は、読むのに覚悟がいる。読み始めたからには、最後まで読みとおさないことを許さないような吸引力がある。
なんていうか、「読まされている」という感覚に近いかもしれない。読むんだろう? お前は最後までこれを読むんだろう? まさかここでやめたりしないだろう? と、有無を言わさぬ迫力で物語が差し迫ってくる。
物語のいいなりになる形で、最後まで、突っ切ってしまう。


本当に、辻村深月は鋭すぎるのだ。
見透かされている。そして見逃してもらえない。
人は、計算高い。人は、周りの目を気にする。人は、自分が一番可愛い。ということを暴かれてしまう。
自分の中にもそれがあることを思い知らされて、消耗する。落ち込む。寝る前に読んだらてきめんに夢に出る(笑)。
でも、本当は誰かにそれを暴いてもらいたくもあったりするのだと気づいている。
だから「読まなければよかった」とは絶対に思わない。


とりわけ、紗江子の章のラスト、そして響子の章には力強い熱量を感じた。
ちょうど太陽の、眩しかったり柔らかかったり痛かったりする光のような。
いつのまにか響子を好きになっている自分が、少し意外。


案の定今回も叙述の仕掛けがあって、見事に騙されました。
もう、いっつも騙される。今回も、一瞬どういうことかわからなくて、何度もページをいったりきたりしてしまった。
ストーリーそのものだけでも面白いのに、その上まだ仕掛けがあって驚けるってどうよ?
すごいなあ!


これは図書館で借りて読んだのですが、解せなかったのは「Teen's」というシールが貼ってあったこと。
つまり、そこの図書館ではティーン向け図書として配架されているっぽい。
どう考えても違うだろう…。表紙や「出席番号○番」という章タイトルだけで判断されたのかなあ。
十代の子がこれを読んでも、あんまりピンとこないと思うけどなあ。



作者さんつながりで
「冷たい校舎の時は止まる」の感想はこちら
「スロウハイツの神様」の感想はこちら
「名前探しの放課後」の感想はこちら


この記事へのコメント

  • ムジマ

    こんにちは、三森さん。
    トラックバックさせていただきました。

    >見透かされている。そして見逃してもらえない。
    この言葉、本当にその通りだと思います、だから深月さんの本を読み続けてしまうんですよね。こんなに落ち込むって分ってるのに…。
    2009年02月23日 13:59
  • 三森紘子

    ムジマさんへ

    こんにちは☆コメントとトラックバック、ありがとうございます!

    「読み続けてしまう」というの、正しくしっくりくる表現ですよね。本当に、落ち込んじゃうんだけれど読まないわけにはいかないというか…
    トラックバックしてくださった記事も、実はとっくに拝見させていただいてましたー! あとでそちらにも参ります!
    2009年02月23日 21:07
  • 夜喰

    はじめまして。こんにちは。
    夜喰と申します。
    コメントさせていただきます。
    私も辻村深月さんが好きです。出会ったのは、小学生の時なんですが、雷に打たれたような衝撃に会いました(笑)
    と言っても、幼すぎてちゃんと意味をわかっていなかったんですが…。
    蛇足ですが、私は「子どもたちは夜と遊ぶ」が一番好きです。
    長文、失礼いたしました。
    2010年05月20日 16:32
  • 三森紘子

    夜喰さんへ

    はじめまして、コメントありがとうございます!
    小学生の時に初めて辻村作品を読まれたというのは、すごいですね~!
    きっと、忘れられない出会いになったことでしょうね。
    私は、確か高校生くらいの時に「冷たい校舎の時は止まる」を読んだんだと思います。
    「子どもたちは夜と遊ぶ」も、とても好きです!
    ありがとうございました^^
    2010年05月20日 21:02

この記事へのトラックバック

「太陽の坐る場所」辻村深月
Excerpt: 痛い。すげぇ痛い。「そんなに落ち込むくらいなら読まなきゃいいのに」と言われたが、本当にそうだよね。一種のマゾヒズムですらある。表紙には女子高生しか描かれていないが、これは内容に合ってないと感じる。たと..
Weblog: Re2:観たもの読んだもの
Tracked: 2009-02-23 13:56

辻村深月『太陽の坐る場所』と「現実」・「虚構」・「虚実不明」
Excerpt: 季節がら辻村深月の作品が読みたい・・・と思い、昨年末に刊行されたらしい『太陽の坐る場所』を週末から読んでいたのですが、ワンパターンの..
Weblog: HESSDNMのネタ&メモ
Tracked: 2009-03-03 01:07