好きな自分 ~上橋菜穂子「夢の守り人」



「おれにはね、人がみんな、〈好きな自分〉の姿を大事にもっているような気がする。なかなかそのとおりにはなれないし、他人にはてれくさくていえないような姿だけどね。
 少なくとも、おれはその姿をもって生きてきた。そして、どうしたらいいかわからない分かれ道にやってきたら、どっちに歩んでいくほうが〈好きな自分〉かを考えるんだ」



はああ、うつくしいなあ。
平易で素朴な文章に、ものすごくうつくしさを感じる。
こういう文章を読むのは、はっきりいって快感であります。幸せだ。
きっとこれも、大きな大きな流れの一部分で。誰に語られることがなくても、物語はそこに存在しているんだろう。


人の世界とは別の世界で花をつけ実をむすぶその“花”は、人の夢を必要としていた。
一方、この世をはかなんでいる者は、花の世界で、永遠に夢を見つづけることを望んだ。
いとしい者を花の夢から助けようと、逆に花のために魂を奪われ、人鬼と化すタンダ。
タンダを命をかけて助けようとするトロガイとチャグム、そしてバルサ。
人を想う心は輪廻のように循環する。
(Amazonの内容紹介より)


お人好しの薬草師タンダ、そして師であるトロガイにスポットがあてられるシリーズ第3弾。
トロガイの過去、タンダとトロガイのつながり、タンダとバルサの絆、成長がたのもしいチャグム。
見どころ(読みどころ?)がいっぱいあって、本当にもう! 何から書けばいいのか!
特にタンダの魅力が今回は爆発でしたね。やさしい人なんだ。かっこいいよ。


それに、今回は待ち望んでいたチャグムとバルサの再会が!
一晩かぎりの再会ではあったけれど。二人の、言葉では表せない強い魂の結びつきに泣きました。
一番上↑に引用したのは、タンダがチャグムに対してかけた言葉ですが、「自分の中にある〈好きな自分〉の姿」と同じくらい、「自分の中にある〈誰か〉の姿」も、その人を強くする希望となるんじゃないだろうか。
チャグムにとってのバルサがそうであるように。タンダにとってのバルサがそうであるように。


それにしてもバルサ、「三十を一つ、二つ過ぎたような」「中年」と呼ばれてしまうのは酷じゃありませんか…!? そろそろ他人事じゃないし(笑)



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