明治は遠くなりにけり? ~横田順彌「明治ふしぎ写真館」



明治時代のちょっと不思議でヘンテコな写真やイラストを紹介している本です。
「この美女は誰だ!?」「サンダウ氏は強いぞ!!」「懸賞まですこぶるバンカラ!!」「明治のお嬢のやることは判らん!」「チョンマゲ野球軍団」「藁靴を履いた猫君?」「牛童とは荒武者のことと見つけたり」等々、各章タイトルを見るだけでもむちゃくちゃ興味をそそられる、という方にはぜひ読んでいただきたいです。
ちなみに「牛童」ってのはカウボーイのことです。


私が好きだったのは、雑誌の編集者たちの後ろ姿の写真や握り拳の写真を載せて、「誰が誰だか当ててください」という懸賞が存在したこと。
そんなもん、わかるわけないじゃん!! 知人だったとしても難しいよ! そもそも当てさせる気ないだろ! …横田氏もずいぶんツッコんでらっしゃいますが、それ以上にツッコミを入れまくってしまう。素敵です。
それから、表紙にもなっていますが、「横綱さんはでっかい象?」という章で紹介されている一連の写真。
何故、わざわざ手間をかけて巨大な横綱とラクダの合成写真を作ったのか…。白熊の写真の四隅に配された美人の写真も、シュールすぎてわけわかんなくて笑える。


西洋のおとぎ話を、日本風に翻訳した書物の挿絵がよかった。
純和風で展開される、「睡美人」(眠れる森の美女)や「碧鬚」(青ひげ)や「燻娘」(シンデレラ)! あ、シンデレラは鹿鳴館スタイルでしたが。
「猫君」(長靴を履いた猫)の猫が紋付き羽織袴を着てるのは、横田氏も大層気に入っておられたけれども、本当に可愛らしいです。いやー可愛い。


小杉未醒という人のかいた画文「夢遊記」も好きです。絵もいいけど、ちょこっとだけ紹介されている文章もすごくいい。ぞくぞくする。
「未醒」っていう名前もいいよね! お洒落!


そして、そんなふしぎな写真群に添えられた横田氏の文章がこれまた、よい具合にユルいのである。
原稿を書いている途中で新しい事実がわかったけれど、「めんどくさいので書きなおさない」とそのままになってたり、語句の意味を広辞苑で調べようと思ったのに行方不明だ、あんな厚い本がどこに行ってしまったんだろう、と書かれてて結局語句の意味はわからないままだったり、体調が悪いから調べないけど気になる人は自分で調べてね、と読者まかせにしたり、高い資料を買って調べて書いたことをテレビ番組にパクられるとグチってみたり、「そういえば、先日、財布を落とした。拾った人、返して。」と唐突に書いてあったり……フリーダム!(笑)
しかも「明治」と銘うっておきながら、大正時代の写真も少なくないのよ。読者的には面白ければ何でもいいんですが、作者側までが「別にいいよね大正でも」と開き直ってる感じがするのがいいです(笑)


横田氏、ちょっとファンになってしまいそう。


この記事へのコメント

  • 日月

    明治って他の時代に比べて描かれることが少ないような気がしますが、破天荒でバンカラな人たちがたくさんいたのですね。
    横田 順弥さんは、ほかにもいろいろと明治研究本屋小説を出しています。
    実在の人物を主人公にした「義侠娼婦 風船お玉」は痛快で面白かったです。
    2009年05月31日 02:04
  • 三森紘子

    日月さんへ

    コメント&トラックバックありがとうございます!
    そうですねー、本当にいろんな人がいたんだなあと驚きです。近いような遠いような明治時代のことを、もっとたくさん知りたくなりました。
    一気に横田さんのファンになってしまったので、「義侠娼婦 風船お玉」もぜひぜひ読んでみたいと思います! おすすめありがとうございます^^
    2009年05月31日 18:55

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「明治ふしぎ写真館」 横田 順弥
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Tracked: 2009-05-28 00:28