ありがとうをたくさん ~上橋菜穂子「蒼路の旅人」「天と地の守り人〈第一部~第三部〉」



素晴らしかった…。
ありがとう、上橋さん、この物語を書いてくださってありがとうございます。
バルサに、チャグムに、タンダに、その他の数えきれない人々に会わせてくれてありがとう。
バルサたちと一緒に、心は遙かなる冒険をしてきました。


彼らは、本当に生き生きとしていました。
彼らが「いる」ということを、手触りや息遣いがあるかのように間近で感じられました。
ただの一人も、書き割り的な描かれ方をしていませんでした。


架空の世界を舞台にしてはいますが、登場する国々は皆、現実のどこかの国を彷彿とさせました。
国、という大きなものと、個人という小さなものについて、深く考えさせられました。


折れない勇気、背負う勇気、突き進む勇気の尊さを思いました。
それは、自分以外の誰かを通して生まれるものであるけれど、生まれたものを枯らさずに育てていけるのはその人の強さなのだということを教えてもらいました。


バルサが我が家へと帰りついた最後の場面を読んで、〈おわり〉の3文字を目にしたとき、込み上げてくるものをがまんできずにいながら、なんともいえない寂しさを覚えました。
おわりまで、読んでしまったから、バルサたちにもう会えない…。
先が読みたくて仕方がないのに、読み終わるのを惜しむ気持ちもある。すぐれた物語は、残酷です。


以下、一冊ずつひとこと感想を書いていこうと思います。
先の展開に触れているので、「これから読もうと思ってるのにー!」という方は、ご覧にならないほうがよいかもしれません。(今さらですけど…)
各項の最初に引用しているのは、カバー見返しのあらすじ紹介文です。・「蒼路の旅人」
新ヨゴ皇国皇太子のチャグムは罠と知りながら、祖父トーサと共に新ヨゴの港を出港する
この船出が チャグムの人生を大きく変えていく…


チャグムのおじいさまであるトーサのあの選択には号泣…。貴方は最初から、そうするつもりだったんですね…。
祖国を出たチャグムの、長い長い旅のはじまり。あの小さかったチャグムが、こんなに立派な若者に…と「虚空の旅人」のときにも思ったけど、この巻でもさらに多くのことを経験し、大人になろうとするチャグムの姿に圧倒された。
つらく険しい、本当に険しい道を、苦しみながら血を流しながらそれでも歩いていくチャグムがたまらない。
それから、タルシュ帝国のラウル王子がマジで怖かった(笑)おおお…おそろしい方だわ…
「旅人」では、「守り人」とは別の方が挿絵を描いておられるけれど、これもとても良かった。景色の中の人物、という配置の仕方が素敵でした。


・「天と地の守り人〈第一部〉」
天と地の守り人〈第一部〉はロタ王国が舞台。
行方不明の新ヨゴ皇国皇太子チャグムを救出すべく バルサは一人 ロタ王国へとむかう……


死んだと見せかけ、同盟を願い出に単身ロタへ向かったチャグムを守るため、バルサもまた、ロタへの道を急ぐ。
その頃タンダは、新ヨゴの草兵として戦に駆り出されてしまう…
戦乱の予感に向けて、ひたひたと影が迫ってくるような空気がおそろしかった。
そんななか、カシャルの頭領の元へ行く途中で子どもたちがいっぱしの見張りのつもりで草笛を鳴らすというような微笑ましいシーンは救いでもありました。
チキサとアスラも元気に暮らしていて、とってもうれしかった!
あと、気の多い娘さんに「ユラリー」という名前をつけるネーミングセンスもよかった(笑)
そして、バルサとチャグムの再会…。自分よりも背の高くなったチャグムに、バルサが抱きしめられるシーンは、感慨深くて胸がつまった。


・「天と地の守り人〈第二部〉」
天と地の守り人〈第二部〉は バルサの生まれ故郷カンバル王国が舞台。
「カンバル王がロタ王国との同盟をむすぶかどうかに 北の大陸の存亡がかかっている」
このことに気づいたチャグムとバルサはカンバル王国へとむかう。
しかし、カンバル王の側近には南のタルシュ帝国に内通している者がいた。
あやうし、バルサ。
チャグムは北の大陸をまとめることができるのか。


カンバルが舞台なので、「闇の守り人」に出てきたカッサや牧童たちがふたたび登場。(読んだのが大分前なので、半分忘れかけてました…)
シハナもやっぱり生きていたー! 幸い敵方にはならなかったけれど、バルサとは一触即発の状態が続いています(笑)
バルサとチャグムの二人旅はとてもうれしかった。元々一緒にいられる二人じゃないからね。
〈さかさ狩り〉はエキサイティングだったし、「タンダがなでたら、バルサも頬をそめるの?」とバルサをからかうチャグムが見れたのもよかった。なごみます。
カンバル王ラダールに対し、皇太子として初めて膝を折ったチャグム、その彼を「見事なホイ(捨て荷)だったね」とねぎらうバルサ。この展開、すごすぎて、震えがきた。


・「天と地の守り人〈第三部〉」
天と地の守り人〈第三部〉で バルサとチャグムはこの物語の発端となったチャグムの祖国、新ヨゴ皇国へむかう。
新ヨゴ皇国は南のタルシュ帝国に攻めこまれ、一方、ナユグの四季も変化の時をむかえていた……


守り人シリーズ、これまでの物語が重なりあい結びあい、ひとつの大きな物語のうねりになっていくさまを、鳥肌を立てながら眺めていた最終巻。
ついに父と正面から向き合うチャグム…戦に巻き込まれるタンダ…そのタンダを探しにゆくバルサ…刻一刻と、状況を変えていく各国の情勢…異世界が春を迎えたことで起こる、大きな天災…新ヨゴはどうなってしまうのか…
最前線で兵として戦うことを強いられたタンダが見た光景は、心底おそろしかった。戦争というのは、こういう理不尽なことが通ってしまうことなんだ…と思った。
皆が歯を食いしばるようにして力を尽くし、自分の思う最良の道を進もうとする、それら無数の道が交錯し、やがて一つの方角を示すこととなる。
「天と地の守り人」というタイトル――地の守り人とはチャグム、そして天の守り人とは父、帝であったのだな。帝は帝のやり方で、それしかないと信じるやり方で国を守ろうとしたのだ。決別は避けられなかったけれど、最後にチャグムがそれを理解することができたのは、僅かなりとも救いであったように思う。
ラスト近くで、ヒュウゴがラウル王子に語った言葉がすごかった。
きょうだい三人で野遊びをするチャグムたちの姿に涙。帝になった日、慣習だった薄布をつけず、素顔のまま皆の前へ出て行くチャグムの姿にも、涙。
…そして、「バルサとタンダ、早くどうにかなればいいのに」派にとっては非常にオイシイ描写がたくさんあります(笑)泣いたよわたしゃ本当にもう…!



全然ひとことになってないし! 長々と失礼しました。
あとは、番外編短編集である「流れ行く者」が残っているんだけど、そして早速借りてきて今手元にあるんだけど、もう少し寝かせておいてから読み始めようと思います。
だってあまりにももったいないからさ。



「精霊の守り人」の感想はこちら
「闇の守り人」の感想はこちら
「夢の守り人」の感想はこちら
「虚空の旅人」の感想はこちら
「神の守り人」の感想はこちらこちら


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Excerpt: 最高だ。なんで今まで「守り人」シリーズ読まなかったんだろう?すっごい良かった。大好きだ、大好き。 間違いなく「守り人」シリーズ最高傑作だ。世の中には数多くのシリーズものがあるが、よくある「10年間続..
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Tracked: 2009-06-07 23:51