恋の歌 ~加納朋子「スペース」



「いつだって、どこでだって、謎はすぐ近くにあったのです。」
という帯のかけられた文庫本、「ななつのこ」を手にとったのは、いつぐらい前のことだっただろう?
ちょうど、主人公駒ちゃんと同じぐらいの歳の頃だったかもしれない。


あの頃は、駒ちゃんのことを「なんて親しみの持てる女の子なんだろう。友だちになりたいなあ」なんて思っていた。
今となっては、ただただ眩しい。歳をとった自分を実感して、何となしにさびしくもあり、感慨深くもあります。


「スペース」は、「ななつのこ」「魔法飛行」に続く駒子シリーズ第3作。
このシリーズが大好きです。学生時代、通学途中の電車の中で何度読み返したか知れません。
駒ちゃんのいかにも文学少女然とした語り口や、時に非常にシニカルであったりする現実や、それにも関わらず全体を通じて感じられる温かい雰囲気や、そういうものが大好きだ。
「スペース」も、単行本で出版されたときに図書館で借りて読んだのだけれど、ようやく文庫化されたので、いそいそと買ってきました。


読み終えると、びっくりするくらい気持ちが外に向いていた。
世界は私に対して開かれているし、何だってできるんだ、というものすごくポジティブな気持ち。
新しいことを始めたい、見たい、知りたい、さあ、何に出会おう? 誰に出会おう? という気持ち。
出不精で腰の重い私にしては、こういう精神状態は珍しい。
たぶん、うらやましかったのかなあ。正しい場所を見つけた彼女のことが。
「いいなあ」と素直に思えたこと自体がとてもうれしかった。


筋書きについて触れるのは、ネタバレ的に好ましくなさそうなのでやめておきますが、今回も「手紙」が重要な役割を担っています。
手紙っていいなあやっぱり。そういえば、「ななつのこ」「魔法飛行」を読んだ学生の頃も手紙を書くのがマイブームになってた時期があった(明らかに影響を受けて・笑)。
電子メールの時代に、あえて自筆の手紙。また書きたくなってきたー。


菊池健さんの挿画が毎度素敵です。どうやったらこんなに優しくてあったかい絵が描けるんだろう…。

ななつのこ (創元推理文庫)

魔法飛行 (創元推理文庫)


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