ひぐちアサ「おおきく振りかぶって」12巻感想その1(阿部・三橋・泉編)

その0はこちら


「――三橋 お前まだ
オレのリード信じて投げられるか?」
・阿部と三橋

(阿部君の手は 冷たいまま なんじゃないか?
阿部君がダメなら オレもダメだ)
(阿部君はきっと 大丈夫だ だから オレも大丈夫……!)
(…いいんだ オレは 阿部君の言うとおりに 投げてれば!)
(カンケイない 阿部君 がそう投げろってサインくれたら そのとおりに投げるよ!)
(……だって それが一番いいんだ
阿部君の言うとおりがオレの 一番なんだ!)
(もう 点 入れられたくない
オレにできるのは 阿部君のゆーとうりに投げること ダケだ!)


…こうやって抜粋してみると、三橋ってこれでもかってくらい阿部への忠誠(笑)を誓ってるんですね。ちょっと言い過ぎなくらいに言ってる。(声に出してるわけではないですが)
たとえ阿部のリードを疑問に思っても、盲目的に判断停止してしまう。三橋は阿部のリードを疑うということを知らない。

(”バッテリーの配球”って…… ”阿部君の配球”ってことだ
オレは役に立たない……し オレの球でどーにかしようと 阿部君はいつも大変なんだ
あの4点……のせいで 負けるわけにいかないんだ!)


三橋は自分が阿部の配球に口出しできるとは思ってないし、阿部もまた、三橋に配球への意見を求めてはいない。
リードする人間と、それを具現化する人間という役割分担が、二人の間で厳然と決められている。

(だめだ なんも思いつかねェ)

リードに行き詰っても、三橋に相談しようとは思わない阿部。
ARCが逆のコースの球を打っている理由について意見を求めたときも、「一応」聞いただけで、三橋に何か意見があるとは思っていなかったフシがあります。


5点目を入れられ、追い詰められた阿部は、三橋に問いかけます。「お前まだ オレのリード信じて投げられるか?」と。
「オレの言う通りに投げろ」「オレがこいつを勝たせてやる」、そうやってずっと強気だった阿部が、こんな風に三橋に委ねるような問い方をするのは初めてなのではあるまいか。
それに対して三橋は、「投げられる!!」と全身で答える。三橋にとっては、阿部のリード通りに投げることこそが、このチームでの存在理由だから。
ああ、阿部は本当に不安なんだね。グラグラしている。
三橋ならきっとそう答えてくれるから、その言葉が欲しくて阿部は問いかけたんだろう。

(阿部君のせいと 思わせたくないのに せっかく点 入ったのに…っ)

(…アホかオレは 何 自分の不安を投手(ミハシ)に押しつけてんだ
しっかりしろ! オレは もっとこいつを生かしてやれるはずだ!)


正念場が近づいてきています。


・首を振るサイン

三橋が首の振り方を聞いてきてる意味がわからなくて、しばらく悩んでる阿部がケナゲだ。怒鳴る前に判明してよかった…(笑)

(まあ あいつが気兼ねなく首振れる相手とかあんまイネーか……
畠っつったっけ その前はもしかしたら先輩だったろうし 今は……オレだしな)


気を遣った阿部(笑)。「完璧だ」「頼むぜ」と言われて嬉しがる三橋がかわいいなあ。
それにしても、三橋の努力の賜物であるコントロールが、その精度の高さゆえに相手に攻略されてしまうとは、なんて皮肉な…
その弱点をどう克服するかが、バッテリーの在り方に関わってくるんですよね。待て次巻。
レガース付け終わって走っていくとき、三橋が「ペコ」ってしてるのは手伝ってくれた西広に対してかなあ?


・泉

(美丞め 見てろよ オレが1点目を入れてやる!)

12巻の注目はやっぱり泉かと思います。
今まで以上に、負けん気の強さがよく表れてたなあ。田島をすごい意識してて。
いや、西浦で田島のことを意識してない人間なんていないだろうけど、そこで「自分とは次元が違う」と思うか、「自分も負けるか」と思うかが人によって分かれるんだろうなー。
そういうイミで、泉と花井は同類なんだろうね。自分よりすごい存在が悔しくて、それをバネにしてもっと上へいける人間。


(るっせえなあ 指なんか言われなくても気ィつけるっつの)

崎玉戦のどっかで阿部が「心の声がもれたかと思ったぜ」なんてヘンな心配してましたけど。
本当にもれていたみたいですね。
もしくは泉、エスパーだったんだー!
まあそれは冗談だとしても、泉はエスパー並みに他人の心を推し量る術に長けていると思うよ。
ところで心の中ではこんだけ阿部ウゼー阿部うるせーと思っている泉ですが、意外にも阿部と直接対決したことってないような気がするなあ…

(ちっとは信用しろよな 阿部って三橋をホントのバカだと思ってっとこがムカツクよ まあバカだけど
三橋はチャンスを作ってくれる そんでオレが1点入れるんだ!)


そして泉が、三橋を正当に評価してくれているというか、少年らしい率直な信頼を寄せているのがうれしいですね。
ふーん、そういう風に思ってるのね、と。さすがはクラスメート。仲間っていいよね…! と爽やかな気持ちになりました。


(それはつまり オレはでけェの飛ばせねーと思われてるってこと?)
(言われなくても次は転がすつもりだったんだ 田島はうまく内野を抜いてたし……
……… あいつ わかっててゴロ打ったのかな)
(……… バント
監督からの評価がコレじゃ 敵になめられたって怒れねェな……)


田島の打席、(まかせるよ!)とノーサインなモモカンを隣で見ている泉、内心穏やかじゃないだろうな。
でも「頼むぞ田島あ!」という声はきっと本心に違いない。
「オレが!」という泉の矜持にはある種の頼もしさがある。
なんとなく泉は、悔しがったり焦ったりしたとしても悪い方向には陥らない気がするんだよな。安心していられる。そこが花井との違いでしょうか(笑・花井ゴメン)
この先が非常に楽しみであります。やっぱり泉は男前だった!




その2に続きます


この記事へのコメント

  • こんにちわ三森さん。

    試合前半は探りあい、頭脳戦がもうドキドキ。
    試合後半は見たいような、見たくないような試合展開と、二校のナインたちの体力と意地とこれまで培ってきたもののぶつかり合い。

    おお振りはほんと見てるのがつらいよー!!たのしいんですけどね^^

    ほんと、三橋は前世犬ですよね、きっと。
    あの忠誠心はただものじゃない・・・。もふもふしてて可愛いですねw
    田島も犬っぽいですけど、運動神経のいい日本の犬って感じです。(なんの話

    ところで泉ですね^^
    心の声がだだもれだよ泉君。
    こうやって三橋のことを阿部が考えて、
    阿部のことを泉が考えているように、
    泉のことをだれかが意識してたりするんだろうなー。
    キャラがちゃんと独立してうごいてる感じがするから、おくゆきがあって楽しいですよね。

    泉すきなんでこのイライラ泉が見れて本当にうれしい巻でした。
    こんな弟を持った泉兄が早くみたいです。
    2009年07月01日 15:01
  • 三森紘子

    春さんへ

    コメントありがとうございます!お返事が遅くなってすみません!

    ホントにドキドキします。頭脳戦、すごいですよね。野球ってこんなに頭を使うスポーツなんだなあ…と、おお振りを読むたびに圧倒されちゃいます。

    >ほんと、三橋は前世犬ですよね、きっと。

    あはは!三橋が犬だったら、馴れるまでにすごい時間がかかるけど、一度なつくとずーっと一緒にいてくれそうですよね(笑)
    田島だったら、人懐こくてご近所中でかわいがられてる犬って感じです。そしてすばしこい! って妄想はこのへんにしときます(笑)

    >こうやって三橋のことを阿部が考えて、
    >阿部のことを泉が考えているように、
    >泉のことをだれかが意識してたりするんだろうなー。

    うんうん、そうですよね! そういう想像ができるところに、物語の生まれる余地がいっぱいあるっていうのが、おお振りの魅力の一つなんだと思います。

    >こんな弟を持った泉兄が早くみたいです。

    泉兄、どんななんでしょうねー。そばかすはあるのかないのか? 男前なのは確定ですよね!(ああ、また妄想が…笑)
    2009年07月03日 13:27

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