佇まいに惚れる ~梨木香歩「f植物園の巣穴」



本屋でこれを見つけて、パラパラと中身を眺めてみて、ああ、これ! もう、これ! と内心大騒ぎだった。
図書館で順番がまわってくるのを心待ちにしていました。



なんてことない活字の羅列から醸し出される、佇まいというものが、えも言われず良いのである。
わたし、もう、その佇まいに心底ヤラレてしまって、眺めているだけで至福という境地。
梨木さんの内からこういうものが現れるのなら、ひょっとして知らぬ間に私は梨木さんにも惚れているのかもしれない。



歯痛に悩む植物園の園丁がある日、巣穴に落ちると、そこは異界だった。
前世は犬だった歯科医の家内、ナマズ神主、愛嬌のあるカエル小僧、漢籍を教える儒者、そしてアイルランドの治水神と大気都比売神……。
人と動物が楽しく語りあい、植物が繁茂し、過去と現在が入り交じった世界で、私はゆっくり記憶を掘り起こしてゆく。怪しくものびやかな21世紀の異界譚。

(Amazonの内容紹介より)



歯医者とその「家内」のやりとりが好きだった。患者の治療中に好き勝手なことしゃべってたりするの。
渦中の人間は自分であるのに、まな板に乗せられた鯉のようにされるがままでいなければならない、というのは結構怖いことだ。仰臥している自分と、頭上高くで立ち動いている彼らとの間にはおおきな隔たりがあるような。まさしく「異界」という言葉が思い浮かびます。
ちなみに内容紹介にあるとおり、「家内」は時々「犬」になります。どうよこの匙加減。
カエル小僧との道行きも、ほんとうに好きでした。
ああ、あんまりたくさん言うとウソになっちゃいそうだな。多くは語らず、いつまでも此処で浸ってたゆたっていたい。



もうとにかく「好き」なので、おすすめできるのかどうか正常な判断ができません…。だって「好き」に理由なんてないんだもん。
少なくとも「家守綺譚」が好きという方は間違いなく楽しめるのではないかな、と思います。



「家守綺譚」の感想はこちら→1回目2回目


 



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