スキとキライからできている ~ヤマシタトモコ「Love,Hate,Love.」




前にちらっと書いてたとおりにヤマシタトモコがすごく気になる今日この頃でして、古本屋にあったのを見つけて買ってきました。



帯のコピーには「28歳処女と52歳大学教授の恋」と。
バレエダンサーになる夢を断念した貴和子がお隣どうしのベランダで出会ったずっと年上の男性。
穏やかに誠実に言葉を紡ぐ彼に、出会った瞬間から惹かれていた貴和子。



28歳で挫折した女性、という前情報から想像してたより、ずっと前向きな話だったのでよかった。
だって、28歳ですよ。28年間生きてきて、今の今までそれにすべてを打ちこんで目指してきた夢を諦める、って、人生において相当なビッグイベントです。
敗北感も喪失感も徒労感も半端なくあるはずだけど、新しいことを始めようとしてる貴和子の気持ちが前に向いているので、読んでいて暗い気持ちにはならない。



「…世の中はイイとかワルイとかゼンとかアクとかじゃなくて
スキとキライだけでできてるっていう
何よりあなたをスキか
何よりあなたをスキじゃないか」



ラスト近くで貴和子が縫原に対して言うセリフ。
すごくわかる気がした。私もそういうふうに考えてるときがよくある。
「わたしのスキなものはね バレエと秋と紺色とコハダと あなた それを全部まぜて わーってやったらわたし できあがり」
”男の子って何でできてる?”というマザーグースの歌を少し思い出すようなこんな会話も、
「あなたのことは本のしおりのヒモよりもスキ」「ぼくは初版本を見つけたときのような気分だ」
相手をどれだけ知ってるか、これからどれだけ知ることができるか、っていう可能性を秘めたこんな会話も、
とてもいいな。向かい合ってる感じ。まずは向かい合うことから始めないと。



兄の頭ごなしの言い方とか、「世界が狭いんじゃないの」って幼なじみに言われてキレたりとか、女友だちの会話とか。
あーあるよなーとリアルに感じました。言う側の気持ちもわからなくはないし。
でも一人だけ、「そんなんじゃおれ他のコのとこ行っちゃうよ?」とか言ってやがる元彼には紙面にチョップをくれてやろうかと思った(笑)「ハア? 何様?」と言いたくなった(笑)



そしてそんなことより何より、貴和子がかわいいんだ。表紙の絵はそうでもないんだけど、本編の貴和子はめちゃめちゃかわいい。
いいなあ、ショートカットの似合う、でも子どもっぽくならない大人の女性。肩幅が小さいから似合うんだろなー。
おまけページに出てきたボブスタイルより、ショートのほうが好きー。
縫原先生も素敵ですよね。歳の差とか全然問題なく恋できそうな素敵さ。枯れているところがまたメロッとくる。



ヤマシタトモコはモノローグの天才だとつねづね思っているのですが、モノローグって基本ポエムなんですよね。
ラストページの一節なんて何たる乙女チックさ! こっちも恥ずかしくなるわ! しかしそれがいいんだ!




作者さんつながりで
「くいもの処 明楽」の感想はこちら
「タッチ・ミー・アゲイン」の感想はこちら
※こちら2冊はBLです



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