手を伸ばせばふたがあく ~雁須磨子「猫が箱の中」




 (あの箱に 猫が入っている
 のぞかなければよかった あんな箱
 のぞかなければ 猫なんか
 入ってなかったかも知れないのに)



「こめかみひょうひょう」に続き、須磨子さんBLの感想です、えへへへ。(←まだこの笑いを引きずっている)
1冊まるごと、高校生と小学生の歳の差恋愛ばなし。
これこれ、この適度な長さがうれしいのよ! かなり読みごたえがあります。



主人公の高校生・和雄は、一言でいうと「ダメ」(笑)
「ヘタレ」ともちょっとちがう。まあ、流されやすいというか、あほというか、バカ正直というか…ダメなやつです。
須磨子さんも出版社のインタビューで「和雄はだめだなと思いながら描きました」と答えてらっしゃることだし、この認識は間違ってないはず(笑)



小学生の男の子に恋したからダメ、というわけではなくて。もっとこう、人間として(そっちの方がヒドイか…)
巻末描きおろし6Pなんて、紙面にむかって「何をやっているんだ、キミは」と思わず冷静にツッコんでしまった(笑)
(どうでもいいけど朝尾先輩と和雄がいたしてるときの効果音がすべて「ごそごそ」なのに笑った。そりゃあ「ごそごそ」としか言いようはないけれども)



でも、そのダメさに妙なかわいさが出てて、憎めないのだよね。
だから和雄はかなりお気にいりなキャラです。地味顔なのもよい。和雄がこういう主人公だから成り立つお話なんだと思うし。
けど、メールで絵文字使い過ぎなのはどうにもイラッとくる…(笑)いまどきの高校生ってこんなもん?



対照的に大層男前なのが、小学5年生のノブ君。
私が男子小学生に求める、ある意味理想の姿がここにあります(そんなもの求めるな、と言われると返す言葉もないが…)
マンガでよくある、女の子に間違われるような過剰な愛らしさがあるわけではなく、どこにでもいそうな少年で、
小学生らしくランドセルが似合って、あどけなくてかわいいけれど、ちゃんと「かっこいい男の子」である。
こいつはきっといい男になるに違いないわという将来性も秘めている!
予想通り男前に成長して、和雄の前に現れたときの口説き文句が格好良すぎ!



ノブ君に対する恋心を自覚した和雄は、罪悪感と怖れからノブ君を避け始める。
仲の良かったお兄さんにある日突然避けられて、傷つかなかったわけはないだろうに、その後のノブ君の対応がホント大人でねー…。
かっこいい、かっこいいなあノブ君。
あの、顔をくしゃくしゃにする笑い方が、大きくなっても変わらないことに大層ときめかされました。



そもそも、キャラクターの子ども時代が描かれたり、キャラクターの○年後とかがオマケで描かれたりすると狂喜するタイプなのですが、
それって、「あんなに小さくてかわいかったのが、こんなに大きくかっこよくなった」っていうのがポイントなんだと思います。
私が歳の差恋愛もので一番楽しみにしてるのって、「成長」なんだろうなー! そしてそれに伴う「時が経っても変わらない思い」が好きなんだ。
もっと年齢層が上の歳の差(中高年と若者とか)だと、またテーマが違ってきそうですけど。



朝尾先輩の変態さ(笑)も、マイケルの無害さもよかった。何気に登場人物すべてのキャラが立っています。
歳の差恋愛ですが、子どもがひどい目にあったりはしないので、そういうのがダメな人にも安心してオススメできる内容です。
あと、猫がめちゃくちゃかわいいです! 猫のためだけにでも立ち読みしていただきたいぐらいです! ですです!



表紙もカラフルでとても好き~、かわいい。
左上の和雄とノブ君につい注目してしまうけど、よく見ると右手前に成長して高校生になったノブ君がいて、過去の二人を見てるんですよね。
なぜかおにぎりを食べてるマイケルと、ちゃっかり和雄の背後を取っている(笑)朝尾先輩もよい。
ところで、カラー口絵の二人が誰なのかわからない。
本編に出てきてない人だよね? 誰だろう。



こちらで試し読みできます


「こめかみひょうひょう」の感想はこちら(BLです)
「のはらのはらの」の感想はこちら(BLです)
「かよちゃんの荷物」の感想はこちら→1巻2巻(非BLです)
「幾百星霜」の感想はこちら(非BLです)



この記事へのコメント

  • こんにちは! 昔の記事にコメント失礼いたします。以前一度だけおお振りのアフタ感想のところでコメントした者です。
    三森さまの感想を読んで「猫が箱の中」を買う決心がつき、最近購入しました☆ 大満足、ですっ(^^)
    ありがとうございました!

    雁須磨子さんの漫画、やっぱりいいですね。
    私は「のはらのはらの」で須磨子さんを知り、「こめかみひょうひょう」はすぐに買ったのですが、「猫が箱の中」は、Amazonの感想で、主人公が受け付けなかったと書いていらっしゃる方もいて、少し買うか悩んでおりました。今は買ってよかったなあと思います。
    三森さまのおかげです☆

    「こめかみひょうひょう」の表題作の二人のように、雁須磨子さんの書かれる照れながらもラブラブな様子が大好きな私としては、欲を言えば、くっついてからの二人の話も読みたかったかなーと思いました。

    長文失礼いたしました。これからもブログ楽しみにしております。
    2010年04月22日 16:43
  • 三森紘子

    柳さんへ

    こんばんは、コメントありがとうございます!
    アフタ12月号の感想にコメントをくださった柳さんですよね。ふたたびのコメント、うれしいです^^

    「猫が箱の中」、購入されたんですねー!
    よかった! 気に入っていただけてよかったです!(感想でオススメした手前、内心ドキドキしていました・笑)
    世間的には、同時発売の「こめかみひょうひょう」のほうが評価が高いように思いますが、私はだんぜん「猫」派です♪
    主人公は確かに好みが分かれそうなタイプですけど、こういうタイプを主人公にしてお話がちゃんと成立してるのは、須磨子さんのすごさなんじゃないかなあと思いました。

    でも、もちろん「こめかみひょうひょう」も大好きなので、柳さんの「くっついてからの二人の話も読みたかった」というご意見には全面的に賛同します(笑)
    きっと幸せなカップルになるでしょうね。

    ありがとうございました。それでは☆
    2010年04月23日 18:58
  • まりお

    こんばんは!三森さん!^_^ 宣言どおりこちらのほうにもコメントさせていただきます~

    でも、、、書きたいこととか本当にほとんど三森さんが記事のほうで代弁してくださってしまっていたので(笑)書くことないな~とか思いつつ…


    >地味顔なのもよい。和雄がこういう主人公だから成り立つお話なんだと思うし。

    須磨子先生の描かれるキャラはけっこう素朴な感じの人が多いですが、今作の和雄はなんというかその極みって感じですよね~ 
    それと地味だから成り立つっていうのわかります…先生が描かれる登場人物って普通の漫画に出てくるようなヘンな“特別さ”がないというか、だからほかの漫画を読んでいるときとはまた一味違ったテイストが味わえるのかな、なんてw 
    「こめかみひょうひょう」「猫が箱の中」「のはらのはらの」読んでみて思ったんですよね~


    >対照的に大層男前なのが、小学5年生のノブ君。
    >あの、顔をくしゃくしゃにする笑い方が、大きくなっても変わらないことに大層ときめかされました。

    ノブ君男前すぎるでしょーーって思っちゃいますよね(゜o゜;) でも逆にこれくらいじゃないと和雄とバランスとれなさそう…w
    あの屈託のない笑顔というか本当によいですよね~♪ うんうん、おれも成長したノブがまったく同じ笑顔を見せてくれたことに大層ときめかされましたよ! 
    ああいうのって小さい頃はもってても、成長するにつれてだんだんなくなってっちゃうことのほうが多いものだと思います いや~変わらないものがあるっていうそれだけのことってとっても大切なことなんですよね~♪♪


    >朝尾先輩
    う~ん、なんていうんでしょう…おれは読んだ3作品のなかでは「こめかみひょうひょう」が好きなのですが、どこかで差をつけてしまう要因があるとすればこの先輩の存在が関係している気がする…(というか抵抗できずにこの先輩に流れちゃう和雄のほうに原因があるんですけどね…あははw)
    べつに先輩自体を否定するつもりはないんですが、というかこの先輩のちょっとなんか黒っぽいところとかいろいろ上手いというか人としてけっこうやり手っぽいところとかからしてこれはこれで好きなキャラなんですが、、、(何故か準さんを思い出すw)  和雄!!一途さも大事だよ!!(心は一途なのかもしんないけど~w)
    でも、いいんです…(←どうした自分w) これが「こめかみ」と「猫」の大きな違いの一点なんだと思うし(まぁ比較とかナンセンスだし野暮なんですが…)
    あぁ~なんというか、「猫が箱の中」はそういう点でこめかみとは違うんだなって、向こうは要するにじつはお互い両想いでしたっていうお話だったけど、現実の暮らしのなかでそういうことが起こる確率ってどのくらいだろうって考えると、まぁこっちのほうのシチュエーションのほうがよりナチュラルなのかなって それによっても大きく好みが分かれるんじゃないですかね~^_^


    >左上の和雄とノブ君につい注目してしまうけど、よく見ると右手前に成長して高校生になったノブ君がいて、過去の二人を見てるんですよね。

    須磨子先生の御本って表紙がとにかくむちゃくちゃいいと思うんですよね~♪ あたたかい感じがするし、色彩とかむちゃくちゃ素敵 絶対無理だと思うけど、中身も全部オールカラーだったらたぶんおれ発狂してると思います(笑) 
    おれも読み終わった後この本の表紙まじまじと眺めて面白いなって思いました♪ 右横にいんのは成長したノブくんだったのか~とか、ここにても先輩の魔の手がとか(笑)


    書くことない言うたわりにめちゃくちゃ書いてるし…(笑) 

    う~ん、こめかみが好きって言いましたが、いろいろ書いてたらこっちはこっちでやっぱ好きだな…えへへへ(←笑) なんというかいろいろバランスのとれてる作品なような気がします。 ダメな和雄とカッコよすぎるノブ、黒い朝尾先輩と白いノブくん…みたいなw

    あと、三森さんの「マイケルの無害さ」っていう表現が……!! まさにそう!!って感じすぎてもがきました(笑)  

    カラー口絵の人たち気になりますね~ 最初見た時は和雄&おっきくなったノブくんと思って、でもあっやっぱり先輩と和雄なのかなと思ったりもしましたが、よく見てみると全然違いますねw 誰なのかよくわからないけれどこの画もまたすごくよい感じ♪

    すいません、なんか欲張っていろいろいっぱい書きすぎてしまいました(^_^;)

    あと!!、、(笑)  最後に、『こめかみひょうひょう』に関してなんですが、すごく興味深い情報がありまして… もうご存じかとは思うのですが、、

    芳野くんが放った名台詞「往来で~」は雑誌掲載時と単行本バージョンでは台詞が違うらしく、雑誌掲載時はかなり気合いの入った長台詞だったようで、その迫力というか言葉責めというか(笑)すごいびっくりして危うく自分が感極まって涙ぐみそうになりましたw →もし万一ご存じでなかったら“世界の果ての本棚”というすごく素敵なブログで紹介されておりますので読まれてみてほしいと思います♪♪

    それでは!
    2011年01月15日 04:09
  • 三森紘子

    まりおさんへ

    こんにちは☆「猫」のほうにもコメントをありがとうございます!うれしいです^^

    >先生が描かれる登場人物って普通の漫画に出てくるようなヘンな“特別さ”がないというか

    そうですね~。漫画だとやっぱり、特に主人公は容姿が優れていたり、
    人並みっていう設定でも絵的には美形だったりすることが多いですが、
    和雄の場合はホントに地味でしたものね(笑)
    でも実際には地味だったり普通の人だって、好きになったりなられたり恋愛はするじゃないかっていうのが
    この作品には描かれていたように思います。

    ノブ君は本当にかっこいいです! 同じ笑顔にキュンですよね!
    成長して、外見的には全然変わっちゃうんだけど、
    そういうふとした仕草が昔のままだったりするのは萌えですよね(笑)

    >「猫が箱の中」はそういう点でこめかみとは違うんだなって、向こうは要するにじつはお互い両想いでしたっていうお話だったけど、現実の暮らしのなかでそういうことが起こる確率ってどのくらいだろうって考えると、まぁこっちのほうのシチュエーションのほうがよりナチュラルなのかなって

    なるほどそうか~、じゃあ私が「猫」のほうが好きなのもその理由なのかもしれないですね。
    絶対両想いになれない(と少なくとも和雄は思ってた)相手のことをずっと想い続けるのは一途ですごく素敵なことだけど、
    じゃあその人はずっと一人でいなきゃいけないのかしら、他の幸せを見つけちゃいけないのかしらとも思うので、
    朝尾先輩のほうに行っちゃうのも納得できるっていうか、しょうがないよな~と。
    先輩とつきあったことで和雄も人間的に成長できただろうし、
    先輩も和雄のことをちゃんと好きだったんだろうなあ…。
    まあそれでも、流される和雄はちょっとアレだよなあとは思います(笑)

    マイケルはいいやつでしたね! 実は一番男前に成長しているのは彼かもしれません(笑)
    カラー口絵はほんとに誰なんでしょうね…
    どなたか教えてほしいです。でもすごくよい!っていうのには賛成です^^

    >芳野くんが放った名台詞「往来で~」は雑誌掲載時と単行本バージョンでは台詞が違うらしく

    そうだったんですかーーー!! 知りませんでしたよ!
    さっそくご紹介いただいたブログ様のほうを拝見しましたところ、
    私も感極まってしまいました…!!
    うわーん何これ、雑誌掲載時のほうが断然好きだよー!
    なんで変更しちゃったんですか須磨子先生!? 芳野にしては饒舌すぎるから??
    でも、こういう悶々とした思いを秘めたうえでのあの一言なのだと思うと、
    芳野のことがますます愛しくなりますね☆
    素敵情報、教えてくださってどうもありがとうございました!
    2011年01月16日 14:11

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