そんなあなたが ~山下哲「カワイイもの好きな人々。(ただし、おじさんの部)」

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たとえば、「動眼」(手芸品店で売っている動く目玉パーツのこと)。
たとえば、「ピリ豆」という名のついたチンパンジーの人形。
たとえば、小鳥を始めとした冬毛の動物たち。
たとえば、ウサギ。ブライス。こけし。



本書に出てくるものたちは、みんなカワイイ。10人中7~8人ぐらいは間違いなくカワイイと言うでしょう。
でもこの本で一番カワイイものは、それらを愛でるおじさんたちの姿です。



41歳(当時)のおじさんである山下さんが、いろいろなおじさんに会いに行って、彼らが「カワイイ」と思うものを紹介してもらうという楽しい本。
皆さん仕事も持ってて、ほとんどの方は既婚者で、立派に生活してらっしゃる方々なのに、自分の「カワイイ」に対してはメロメロになってしまう。
そこがもう、たまりません。
だって、メロメロなんだもの。このおじさんたち。
そして、メロメロしながらも、節度を持った大人であるのがたいへん素晴らしい。


スッポンモドキのモモちゃんを見せてくれた羽鳥さん(41)へのインタビューが特に、読んでいて目尻が下がりました。
モモちゃんは別名ブタバナガメというだけあって、カワイイとブサイクのラインがきわどいお顔なんですよね(笑)
でもよく見るとつぶらな目をしてる。「こりゃかわいいです」と誉められると、「よかったなモモ、山下さんがおまえのこと、カワイイって!」と羽鳥さん大喜びしてて。
モモちゃんがこんなにカワイイのは、その羽鳥さんの愛情あってこそなんだと思うのですよね。



ところで、姿、と上で書きましたけど、実は俳優の小日向文世さんを除いて、この本にはおじさんたちの顔写真はひとつも出てきません。
たぶんわざとそうしてるんだと思うけど。
そりゃね、実際に、カフェの隣の席でおじさんがブライスのお人形を何体も並べていたら、「うわあ」って思っちゃうかもしれない。
でも本書では、あえておじさんを画面に登場させないことで、「カワイイ」を愛することのピュアさが浮き彫りになってるんじゃないかと思う。
写真の中のカワイイもので和み、写真の外側やカメラの前にいるであろうおじさんたちでも和む。一粒で二度おいしい、お得な(笑)本でした。



想像してみてください、海岸で夕景を見ながら、アザラシの人形を対面させて楽しげに笑い合う二人のおじさんを。
それはやっぱり、ちょっと離れたところからほんのり愛でていたいカワイさなのです。




ほぼ日刊イトイ新聞-カワイイもの好きな人々。



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