激動の道 ~上橋菜穂子「獣の奏者」3 探求編




上橋菜穂子さんの紡ぐ物語に触れるとき、私の心はつねに歓喜に奮えている。
3巻も本当に…すごい、すごかったです。



 「この地図には、多くの物語があるのよ」
  クリウは、ささやくように言った。
 「この壁に飾られるまでに、数奇な運命を辿ってきたの」



この三行だけで満たされる。
これは本筋にはまったく関係のない部分で、その運命についても特に語られずそれっきりなのだけど、
ああここに、私の知らない物語があるのだ! と考えるだけで叫び出したいほど幸せを感じる。どうしてこんな気持ちになるんだろう?



前作、「闘蛇編」と「王獣編」では、まだ娘と呼んでもいい年齢だったエリンも、愛する人と結ばれ、子どもを生んだ。
母となっても、背負う運命から逃れられないエリンは、この国の行く末に関わる重大な選択を迫られる…



エリンの旦那さんについてはなかなか語ってくれなかったので、ずっとソワソワしてたんですが(笑)、
中盤あたりでやっとイアルが登場したときには、「やっぱりいいい!」とひとり大興奮しました。これが興奮せずにおれるか…!



エリンが「……ここまでね」と言い、イアルが「ああ。ここまでだな」と言う、その僅かなやりとりの中に、なんという万感の思いが込められていることか。
上橋さんは本当に、夫婦や恋人同士の絆を描かれるのが上手だ。「上手」なんて一言で済ませてしまうのもおこがましいくらいだ。
人が人を思いやることの貴さがそこにはくっきりとあって、厳粛な気持ちにならずにはいられない。本当に、感極まる。



エリンたちのゆく道が、ふたたび激動を始めた「探求編」。
続きを知りたくてガマンできなくて、読み終えたその足で本屋に「完結編」の立ち読みをしに行ってしまった(笑)本屋さんに悪いのでさすがにちょこっとしか読みませんでしたけど…
あとは図書館の順番を待つのみです。…はーやーくー。



1・2の感想はこちら


 



この記事へのコメント


この記事へのトラックバック