エリンの生 ~上橋菜穂子「獣の奏者」4 完結編




 「わたしがしてきたことには、なにか意味があるのかしら。わたしは、なにか、できたのかしら」
  イアルは、答える言葉を持たぬまま、ただ、妻を見つめていた。
  エリンもまた、その問いには答えなどないのだと思いながら、薄青い空を見ていた。

  かけがえのない時が、とどめようもなく過ぎていくことを感じながら、二人は長いこと秋の野に座り、空を見上げていた。




もう一字一句が素晴らしい。



映像が瞬時に頭の中に流れ込んでくる。
映像っていうか、世界が。
ことばがそのまま世界となって本から飛び出して、両耳のあたりでぶわっ…と左右に分かれて包まれる感じ。
私はいま、ものすごくおおきく厳しくあたたかい何かに包まれているぞ。
そんな感じ。



ジェシの入舎の式のためにイアルが帰ってきてくれたこと。金糸を買いに行ったこと。二人で秋の空を見たこと。人は、自分が何をして、どんな結果を招くのかを知らなければならないというエリンの言葉。セィミヤの覚悟。飛び去っていく王獣の優美で荘厳な体。アルに乗ってエリンを助けに来るジェシが幼いエリンの姿と重なったこと。すれ違う母の顔。
そんなことたちが、映画やアニメのクライマックスの走馬灯のように頭を巡る。



うまく書けない。うまく書けない。
胸がいっぱいでうまく書けない。



どうして、どうしてこんな物語を書けるの? 上橋さん。
読めてよかった。読めてよかった。
読めて本当によかった。



そして私は、イアルがちょっとどうかと思うくらい好きです。冬の木立のようなひと。




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この記事へのコメント

  • 日月

    今回、奇跡は起きませんでした。でも、エリンは自らの人生をかけて生きものの姿を追求して、未来へつないでいった。それはある意味では奇跡なのかもしれませんね。
    2010年07月14日 23:35
  • まるあ

    スゴイ物語ですよね!
    王獣編を読み終わったあとは「みんな幸せに暮らしました」と
    脳内で完結させた単純なワタシ。
    まさかこんな物語が続いているなんて…

    >私はいま、ものすごくおおきく厳しくあたたかい何かに包まれているぞ。
    そう! まさにそんな感じ!!
    物凄く圧倒されました。

    そして私も我ながらどうなんだ?
    と、首をかしげるくらいイアルが好きです~。
    堂上教官(図書館戦争)と張るくらい大好きなキャラです。
    並べると私の好みが丸わかり(爆)
    2010年07月15日 09:29
  • 三森紘子

    日月さんへ

    コメントありがとうございます!
    本当にそうですね。エリンが未来へ託していったもの、それを受け取る者が存在することそれ自体が、奇跡なんだと思います。ジェシがいてくれて、本当によかったです。
    2010年07月15日 21:41
  • 三森紘子

    まるあさんへ

    コメントありがとうございます!
    本当にスゴイ物語でした…
    いったん王獣編であんなにきっちりと完結したのに、
    まだ続きの物語があるなんて…しかも、こんなに素晴らしい物語が…

    あとがきにあったように、まさに「歴史の物語」だったように思いました。
    歴史に終わりはないですものね。

    やった~、まるあさんもイアルがお好きなんですね! 仲間だー(笑)
    そして確かに、堂上教官と通じるものがあるかも…!!
    二人とも、生き方がかっこいいところが共通していると思います!
    まるあさんの好み、把握できました(笑)
    2010年07月15日 22:05

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