なんて楽しい ~冲方丁「天地明察」




面白すぎると涙がこぼれるのはなぜだろう…と思いながら読みました。



 江戸、四代将軍家綱の御代。ある「プロジェクト」が立ちあがった。即ち、日本独自の太陰暦を作り上げること--日本文化を変えた大いなる計画を、個の成長物語としてみずみずしくも重厚に描く傑作時代小説!!
 (Amazon内容紹介より)



紹介にあるとおり、みずみずしいという言葉がとても似合う小説。
徳川幕府に碁打ち衆という役職があるのも初めて知ったし、算額(算術を記した絵馬)という言葉も初めて見たし、暦というものが具体的にどのようにして作られてきたのかも知らなかったので、
読むものすべてが新鮮で、楽しくてしようがありませんでした。
それだけじゃなく、主人公・渋川春海を始め登場する人物(たぶん実在の)たちが本当に生き生きとしていて、出て来る人出て来る人、ものすごい速さで好きになれました。
本当にみんな魅力的なんだ…。
私、建部さんと伊藤さんがとても好きでした。ご老体といってよいお二人が少年のように空を凝視して「星だ!」「星だ!」と叫ぶところがとても好きでした。



保科正之の登場場面も良かった。
彼が隠居して会津に戻るとき、噂を聞きつけた民衆が集まって、派手に歓呼するでもなく一斉にひれ伏したというくだり、ああいうエピソードが私、ツボみたいです。
時代小説はどちらかというと苦手分野なのだけれど、こういう風に描いてくれたらとても感情移入がしやすいなあ。



改暦はなにしろ生涯をかけて成せるか否か、という大事業、
それに関わる人々も、年嵩の者から順に寿命を終えていきます。
誰かを失くすたびに、その人の思いごと背負って、何度挫折を繰り返しても歩み続けた春海。
彼はいつの時も、一人ではなかった。
大願成就へ向け邁進する春海のすぐ傍にはいつも、
春海が出会ってきた人々が、まるで綺羅星のように大勢、
見守るように微笑んでいるのが目に浮かぶ気がしました。



春海の歩んできた道は…とか、人一人の一生とは…とか、
私は果たしてこんな最期を迎えることができるんだろうか…とか、
さまざまな思いが去来して、読後はしばし虚脱感に襲われてしまいましたが、
読んでいる最中は本当に楽しかった、心底面白かったです。
なんだか神道について学びたくなったよ。



図書館での順番待ちが呆れるほど長かった、2010年本屋大賞受賞作。
なんだか映画化しそうな…と思ってたらやっぱり映画化決定したみたいですね。
公開されたらきっと観るだろうけど生半可な役者さんには演じてほしくないなあ(でも「おくりびと」の監督さんなら期待できるかな)、と思うくらいに登場人物たちへの思い入れが強い作品です。
この方の他の作品もぜひ読んでみたい。


 



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