コメディア・デラルテの開幕 ~小島てるみ「最後のプルチネッラ」




「ごらん、おいらの顔を。もしおまえらが一人ぼっちで闇の中にいて、苦しくて悲しくてどうしようもないと感じたら、きっとおいらと同じ顔をしている。その瞬間、おいらはおまえらの中にいる。おまえらを笑わせたくてそこにいる。闇を知る者だけが、おいらを見つけられる。道化っていうのは、どんなに生きるのがつらい時でも、自分を笑わせることをやめなかったやつだ。笑いが闇を照らす光であることを知っている。だからこそ、おいらはみんなを笑わさずにいられない。道化が仮面をつけるのは、自分の悲しみを<かくす>ためじゃない。おいらの顔は生きることに苦しみもだえる悪魔の顔、人間一人一人の顔だ。人々は道化の仮面に自分の苦しみを重ね、同時に、仮面に生命を与え、笑いを生みだす道化のからだに、生きる喜びを見つけるんだ」
  (本文212~213ページ)



何で見聞きしたのかはもう忘れてしまったけど、何かの折に存在を知って、気になって読んでみた本です。
でも実は、図書館で借りるのは2回目…(1回目は返却期限が来てしまって読めずに返した)
再度借りてよかったです。すっごく面白かった。
冒頭、ルカの「それではお言葉にあまえて」という台詞から一気に惹き込まれていきました。



舞台はナポリ。主人公は2人の少年。目指すのは「最後のプルチネッラ」。
プルチネッラとは、喜劇役者が演じる道化の名。偉大なる人気喜劇役者マリオ・マリンゴラはその死後、これ以上の道化はもう現れないだろうという意味を込めて「最後のプルチネッラ」と呼ばれた――。



プルチネッラ、パンタローネ、ドットーレ、アルレッキーノ、コロンビーヌ…
この辺の名前は藤田和日郎先生の「からくりサーカス」にも出てきてたので、ちょっとうれしくなると同時に、
それ以後この話は藤田先生の絵で脳内再生されるようになりました。
(最近の「小説を読む時、任意の漫画家さんの絵でイメージする」という癖は桜庭一樹さんの影響です。楽しいんだこれが…)



同じ名前からたまたま連想したというだけのことだったのだけど、これがハマるハマる!
黒髪・長身・容姿端麗でクールな演劇界の貴公子ルカ、
赤髪・小柄で貧乏暮らしだけど元気でお調子者のジェンナーロ、
そして少年2人を導く、黒衣の美貌の男<黒い道化師>。
さらに並行して語られるのは、記憶を留めたまま転生を繰り返す「神の道化」の独白…。
このキャラクター造形、藤田絵がすっごい似合いそうじゃないですか…!?



そんな具合だったので、ふんふん興奮しながら読み進めました。
もちろんこんな読み方をしなくても、からくりサーカスを知らなくても、
この作品はとっても面白いと思います!(わ…私が言っても説得力ないかもしれないけど、ナポリ出身のイタリア語の先生の推薦文も付いてます)
同時デビュー作のもう一冊、「ヘルマフロディテの体温」もぜひ読んでみよう。


 



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