また咲くよ ~是枝裕和「花よりもなほ」




2005年に公開された「花よりもなほ」という映画が、すごく好きなんです。派手さや話題性はあんまりないけど、
すてきな役者さんがたくさん出ていて、どこかとぼけてておかしくてあったかくて、みんなどっこい生きてて、
手のひらにのせて、にこにこと愛でたくなるような映画なんです(物理的にムリだけど)。



これはその監督の是枝さんによる小説版。
原作というわけではなく、映画の後に書かれたものだそうなので、
映画未見の方は、読む前に奥付のキャスト一覧を見ておくとイメージしやすいかも。
ちなみに主演は岡田准一君(大好き)です。



赤穂四十七士の討ち入りよりちょっとだけ前の江戸の、ものすごく貧乏な長屋が舞台の物語。
人にたかってばっかりの遊び人、再士官を望むプライドの高い元侍、うだつの上がらない商売人、子連れの美人後家さん、陰のある一匹狼、何やらあやしげなお医者、などなどと一緒に暮らしているのは、
父の仇討ちを一族に任されて信州から出てきた、剣術が苦手なお武家の長男・宗左衛門。
仇相手が見つからないまま、隣人にたかられたり、金に困って寺子屋を始めたり、後家さんとその子どもと仲良くなったり、侍じゃない相手にボコボコにされて自信を失ったり、うっかり仇を見つけちゃったり。
このままではいけない…と思いながらも長屋の人びとと過ごす日々は、悩みと喜びと発見の連続で。



人は何のために生きるんだろう。何を受け継いで、何を伝えていくんだろう。
この小説を読んだところで、簡単に答えが見つかるわけじゃありません。
でも、「桜が潔く散るのは来年また咲くのを知っているから」だと、登場人物の一人が言ったように、
逃げたりズルしたり巧く立ちまわったり、ときに落ち込んでも、したたかに生きてゆく人びとを見ていると、心になぜだか温もりがじんわり満ちてくるのです。
花よりもなお鮮やかに。



店子じゃないのに長屋に住みついて、でも皆に受け入れられてる孫三郎(ちょっとおつむが弱い)がなんとも愛らしくてとても好きなのですが、
映画ではキム兄こと木村祐一さんが演じてたんですよね。ほんっと良かったです。ハマリ役でした。たくさんたくさん!
宗左衛門のおちゃめな叔父上役であった石橋蓮司さんもすっごく良かったです。







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