ぜひ一気読みで ~渡瀬悠宇「櫻狩り」上中下巻





 「けれど人間は 人間の中でしか磨かれない」



感想、寝かせすぎました…
上巻が刊行されたのが2008年。とっても話題になってましたね。
そのときも気になってたんだけど、まあなんとなく(主に「値段が高い」という理由で…)読まないままでいたのですが、
最近ふと思い出して、読んでみることにしました。



結果的に、すでに完結した状態で読んで正解でした。
というのも、上・中・下と読んでいって、一巻ごとにこれほど印象の変わっていく作品もそうはないと思うからです。



上巻の時点では、まだ軽い気持ちで読めました。
昔の日本特有の色っぽい雰囲気とかエロが目的でもいけるんですよね。(だって「渡瀬悠宇」といえば『思春期未満お断り』、すなわち「ちょいエロ」だもの…!私の中では・笑)
でも中巻で、あれちょっと違うぞこれは…となってきて、読んでてかなりシンドイ描写もあり、うう、下巻は私…読めないかもしれんぞ…と思ったんですが…
そのときにはもう下巻も買って手元にあったので、結局読みまして。
下巻でまた、作品に対する見方ががらっと変わりました。



大正時代、華族の屋敷に住み込むことになった書生の少年、若く美しい次期当主の青年、蔵に幽閉されたアルビノの少女、そして彼らを取り巻く様々な人々の、思惑と愛憎が入り乱れる人間模様。
同じような舞台設定、同じようなあらすじの話はきっとたくさんあるでしょう、ベタと言われればベタなんですが、
渾身の力を込めたベタというのは凄いものになりますからね。
渡瀬先生の「渾身」を、見せつけられたような気がしました。



下巻がやっぱり素晴らしいと思う。下巻が良いです。下巻ばっかり読み返してます。
特に正崇が郷里に帰って、弟と初めて心を通わせ、
そして恩師の先生に対して真情を吐露するくだりが好きです。
上に部分だけ引用しましたが、正崇に向けられた先生の一連の言葉は、胸を打ちました。



素敵な先生ですね。素晴らしい先生ですね。
あんな先生に、正崇もきっとなるでしょうね。
皆が正崇のように強く在れるわけではないから、この話は普遍的なものではないけれど、
でも先生のあの言葉だけは、普遍的であったのではないかと思います。



こんなこと言うの恥ずかしいけど、最後の夜は神々しすぎたなあ。
ハッピーエンドではないかもしれないけど、
バッドエンドでは絶対にない。
だって蒼磨は「僕は生きる」と言ったのだから。
「死にたい」でも「生きたい」でもなく、「生きる」と。



加藤さんがずっとどういう思いで仕えていたのか、とか考えちゃいますね。



各巻のあとがきは、ちょっと裏話書きすぎかなーと思ったけど(言い訳に感じられてしまう部分もあったりしたので…)、
はっきり「性暴力」だと自覚して描いておられたのだとわかったことについてはよかったです。
続編や番外編があるのなら読んでみたいな。
本編ですっかり描き切られた感はあるけれど。



男同士の性描写がダメな人にお勧めできるかっていうとやっぱりキツイものはありますよ…。それなりにたくさん出てくるから。
でも私は、うん、最後まで読めてよかったです。
少なくとも中巻まで読んだんなら、下巻は絶対読むべきだと思う。



ところで、渡瀬先生の絵って大好きです。
特に横顔が奥ゆかしくてうつくしい。
この絵でこういう話をやられちゃうと、どっぷりはまってしまうよね。




 



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