幸せはどこにある ~藤田和日郎「月光条例」13巻




 「かわいそうだ。主人公が不幸な結末になっちゃうのは。
 「読み手」の子供たちだってかなしく思ってるよ。そんなのいやなんだよ。」


 「〈作者〉が生み出す「おはなし」は、言いたいコトがあって生まれてくる。
 書き直したら、言いたいコトじゃなくなっちゃうだろう…
 お話は言いたいコトを言わなくなったら、死んだと同じ…」




お菊を助けられなかったことを悔やむチルチルは、はだかの王様に懇願し、誰か不幸なキャラクターを幸せにさせてくれと頼む。
その気持ちにこたえ、条例執行を猶予することにした王様は、あるおとぎばなしの存在を口にする。
そのキャラクターは、「マッチを売る幼き者」。
マッチ売りの少女が、ついに登場です。



マッチ売りの少女の話が気に入らない、と藤田先生が「うしおととら」1巻に書いたというのは、わりと有名な話だと思います。
かわいそうな主人公がかわいそうなまま終わるなんて納得いかない! といって「うしおととら」を描き始めたかつての藤田先生は、そのまま今作中のチルチルの姿に重なります。
そして、アンデルセンの姿にも重なるのです。
〈読み手(ニンゲン)〉の心と、〈作者(サクシャ)〉の心。
藤田先生は、そのどちらをも持っているからです。



「うしおととら」を描きあげた藤田先生は、単行本最終巻で、ある「答え」に辿りついたことを書いています。
その「答え」と、はだかの王様が辿りついたという「答え」は、同じものなんじゃないかなあ。そんな気がしてなりません。
この『月光条例』というおはなしは、〈読み手〉と〈作者〉との、心の旅の物語なのだ…。



チルチルの話はこの巻ではまだ終わってないから、半分は憶測なんですけどね。
これは本当に目が離せないなあ。続きがとっても気になるよ。いよいよ月光の話になっていきそうです。



今巻はチルチルの話がメインだったので、その他のキャラクターの出番はちょろっと挿入されるだけでしたが、
その中でもミッフィーのお口(「×」)の工藤サンと赤ずきんちゃんがかわいかったです。
裏表紙の藤木サンもかわいいし、一寸法師の姫君も麗しい~。
ランプの中で月光とともにいる「センセイ」というのは、もしかして…
けっこうコラムの代わりに描かれたおまけまんがにも、物語の力を誰よりも信じる藤田先生の「言いたいコト」がいっぱいつまっていました。必読。




12巻の感想はこちら



 



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