私たちの余生 ~辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ」





お久しぶりです、深月さん。



中学二年のふたりが計画する「悲劇」の行方
親の無理解、友人との関係に閉塞感を抱く「リア充」少女の小林アン。
普通の中学生とは違う「特別な存在」となるために、同級生の「昆虫系」男子、徳川に自分が被害者となる殺人事件を依頼する。
 (Amazon内容紹介より)



ほんとに容赦ないというか、うまい、うまいなあ。
学校の中は厳然たる身分制度社会。それはもう事実。
「そんなの関係ない」と、身分差を越えていこうとするヒロイックな人間は、もしかしたら現実のどこかにはいるのかもしれないけど、この作品には出てこない。
なぜならそれは「ある」ものだから。
アンや徳川がその時生きていた社会とはそういう社会だったから。



容姿や運動神経の有無で階級が決まる、ささいなきっかけで教室での立ち位置はコロコロと覆る、
死に惹かれる、親をわずらわしく感じる、自分は特別だと思いたがる、
「そんなことで」と、大人には笑い飛ばされてしまうようなことが、
死にたくなるほど「この世の終わり」だったりする。
小さくて狭い、だけど怖ろしく純粋に澄み切った、アンたちの生きる世界。



中学生活というのは、私にとってはもう過ぎ去った時代なので、
そこまで重大なダメージを受けることなく読めました。
「太陽の坐る場所」や「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」は同年代の話だったのでもっとしんどかったけど。
逆に、現役中学生がこれを読んだ感想が知りたいな。



著者お得意のミステリ的な仕掛けは今回はないけれど(私が見落としてなければ)、
最後のほうにタネ明かし…とも呼べないようなタネ明かしがちょっとだけあって、
少しだけ微笑まされます。少しだけ胸が甘く締め付けられる。
ねえ、余生も、そんなに捨てたもんじゃないでしょう?



久々の辻村深月だったから忘れてたけど、夜から読み始めるもんじゃなかったな…。
案の定、読み終えるまで眠れない! というハメに陥りました。
でも安眠という観点からみれば(笑)、ラストの爽やかさに助けられたかも。
だから、あらすじを読んでゲンナリしちゃった人も、試しに読んでみてください。



「太陽の坐る場所」の感想はこちら
「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」の感想はこちら



 



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