産毛のように眠ってしまう ~穂村弘「短歌ください」





「ダ・ヴィンチ」で連載中の読者投稿短歌コーナーが1冊の本にまとまったものです。
連載も毎回楽しみに読ませてもらってますが、こうやって1冊になってもまた新たな発見などあって、非常に楽しかったです。



気に入った歌を抜き出していたらものすごく多くなってしまった。 ご興味のある方だけどうぞ。
穂村さんご自身の歌もこっそりまぎれてます。






 

たっぷりと砂糖をいれたヨーグルト鈍い爆発音が聞こえた
(晴家渡・男・26歳)



・「鈍い爆発音」っていうフレーズがなぜか気にかかります。ただちに身の危険が迫っているわけではないけど、看過できない不穏さがあって、こわい。こわい歌はいい歌。(←穂村さんがよく使う言葉)



 
キヨスクの100円硬貨の表面に朝の光が正しく届く
(イマイ・女・30歳)



・椎名林檎の「正しい街」という歌(唄のほう)を思い出します。



 
水底でカッと見開く両眼(りょうまなこ)探しているの足りない部品
(佐藤純子・女・26歳)



・具体的にどういうシーンなのかわからない、と穂村さんは書かれていましたが、私は故障して川底に沈められたドラちゃんの姿が思い浮かびました。そういうシーン、大長編であったよね?確か。



 
ここにいることがへたくそ。ツルハゲの白いマネキンなんかよりずっと
(小林晶・女・26歳)



・「ここにいることがへたくそ」というフレーズにしびれる。



 
こんにちは私の名前は噛ませ犬 愛読書の名は『空気』です
(冬野きりん・女・18歳)



・うまい! 字足らずじゃなかったらもっと好き。



 
あおむけに時計をおいて真上からのぞいていると母の呼ぶ声
(はれやわたる・男・27歳)



・シュールな光景です。無表情なのかしら。



 
梅雨入りを言い当てたあと妹は産毛のように眠ってしまう
(eh・女・18歳)



・「産毛のように」という表現に親密な情を感じる。



 
殺傷力ナンバーワンはこの方です! キーボード所属エンターキーさん!
(チヲ・女・26歳)



・テンションが高いところがいいと思う。



 
百均でこれはいくらと訊いてしまう青空よあの街まで届け
(虫武一俊・男・28歳)



・「青空よあの街まで届け」という下の句が、投げやりなようで博愛のようでなんともすがすがしい。



 
「いてくれてよかった。会いに来てくれてありがとう」って、言えてよかった。
(櫻井ひなた・女・24歳)



・こういうシンプルな歌がとても好きです。



 
コーヒーのカップが落ちるのを自然体で見送るという欠落
(照井麻耶・女・16歳)



・見送ることありますね。「あー落ちるなー」と思って見ている。そして拾いに行くまでも時間がかかります。何だろう?ああいう精神状態って。



 
少しだけネイルが剥げる原因はいつもシャワーだよシャワー土下座しろ!
(古賀たかえ・女・30歳)



・「シャワー土下座しろ!」が完璧すぎる。


 
あの夏と僕と貴方は並んでた一直線に永遠みたいに
(木下侑介・男・22歳)

燃えている街を見下ろす燃えている街よ私が貴方の母よ
(木下侑介・男・23歳)

目を閉じた人から順に夏になる光の中で君に出会った
(木下侑介・男・24歳)

目を閉じるたびに光が死ぬことや目を開けるたび闇が死ぬこと
(木下侑介・男・24歳)

完璧な死体と夏が誤解するほど僕たちは抱き合っていた
(木下侑介・男・25歳)



木下侑介さん特集(笑)
私はこの人の歌が好きみたいです。(そして木下さんは「夏」がお好きみたいですね)
好きだと思うポイント
・57577にきちんとおさまっている
・口語であり、自然な文章である
・イメージ喚起力がある
・フレーズがうつくしい
投稿を続けながら、確実に歳を重ねていかれているのにもひっそりと萌えます。



 
つむってもひかりが入ってくるのです。うすい瞼はお嫌いですか?
(いさご・女・19歳)

風鈴にまぎれて微かさよならねってそんなふうに ような気がした
(伊藤真也・男・34歳)



 

ペガサスは私にはきっと優しくてあなたのことは殺してくれる
(冬野きりん・女・18歳)

隕石のひかりまみれの手で抱けばきみはささやくこれはなんなの
(穂村弘)


 
五十メートルごとの自販機の小宇宙地球は青いポカリスエット
(ソウシ・女・14歳)

こんなにもしあわせすぎる一日は早く終わって思い出になれ
(ひろ・女・19歳)


 
旗をふる人にまぎれて旗をふるだれも応援しませんの旗
(陣崎草子・女・31歳)

総務課の田中は夢をつかみ次第戻る予定となっております
(辻井竜一・男・29歳)



 

楽園じゃないと言ったろ血へどまできらめくただの死なない国だ
(原田・女・36歳)

このままじゃだめだとえらい人が言う国に暮らしてときどき笑う
(古屋賢一・男・31歳)





短歌を読むと、短歌を詠みたくなりますね。




穂村さんつながりで
「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」の感想はこちら
 

 
 



この記事へのコメント

  • 柳 多久

    こんばんは☆
    普段、全然短歌を読むことも詠むこともないので、新鮮で、とても楽しく拝読いたしました。

    「総務課の田中は夢をつかみ次第戻る予定となっております」

    この短歌には、クスっと笑わされました。なんだか好きです。
    難しいことを考えないで、もっと色々と楽しめばいいんだなあと思いました。(よくわからない感想をすみません・汗)
    いきなり失礼いたしました>< では!
    2011年11月13日 22:05
  • 三森紘子

    柳 多久さんへ

    こんばんは!コメントありがとうございます☆
    「総務課の田中」の歌、なんかいいですよね^^あっけらかんとしているところがいいです。
    私も全然詳しいわけじゃないですが、なんとなくいいなあ、好きだなあと気楽に楽しめるのが短歌の良いところだなーと思っています。

    この本は普段短歌をよまない人でも面白く読めると思うので、オススメですよ~。
    うちの記事で短歌に興味を持っていただけてうれしかったです、ありがとうございます^^
    2011年11月14日 20:10
  • 木下侑介

    はじめまして、短歌くださいで検索してたどり着きました


    私の短歌を取り上げていただきありがとうございます。

    励みになりました。

    今は短歌くださいには投稿していませんが、またいつか作品を通してお会い出来ましたら。

    では
    2011年11月15日 01:16
  • 三森紘子

    木下侑介さんへ

    はじめまして! コメントありがとうございます。
    なんだか好き勝手なことを書いてしまい、ご本人のご登場にただいま赤面しております(汗)
    お気を悪くされていなければよいのですが…

    記事にも書かせていただいたように、私は木下さんの歌がとても好きです。
    またどこかで木下さんの作品とお会いできる日を楽しみにしています。
    ここに辿りついてくださって、ありがとうございました^^
    2011年11月15日 20:14
  • 木下侑介

    お久しぶりです

    再来年の夏に展覧会を開くことにしました。

    良かったらでいいので遊びに来てくださると嬉しいです
    展覧会の情報は以下で呟いています

    http://twtr.jp/user/kinokumasan575

    では
    2012年07月04日 00:58
  • 三森紘子

    木下侑介さんへ

    お久しぶりです!コメントありがとうございます。

    展覧会、すごい!!(興奮)
    横浜で開かれるんですね。
    うちからはちょっと遠いので、行けるかどうかは・・・なのですが、なにしろ再来年のことですから、行きたい方向で検討しようと思います。

    ご準備等大変でしょうが、応援しています^^
    2012年07月05日 21:48
  • 木下侑介

    お久しぶりです。
    木下侑介です。

    展覧会ですが色々あり無しになりました……
    代わりにと言っては何ですが、穂村さんの「短歌という爆弾」の文庫版のロングインタビューで俺の短歌が「100年後も残る短歌」という文脈で引用されました。
    とても嬉しかったです。

    作品をまとめて発表したいと思っていますので宜しければご覧いただければ大変嬉しいです。

    では突然失礼しました。
    2013年12月09日 22:13
  • 三森紘子

    木下侑介さんへ

    コメントありがとうございます!
    展覧会、残念でしたね…。
    でも、「短歌という爆弾」(聞いたことあります!)文庫版、チェックしておきます!
    どの作品が引用されているのかな…楽しみです。

    これからも創作活動、応援していますね^^
    2013年12月10日 20:42

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