語りつくしがはじまる ~井上雄彦×伊藤比呂美「漫画がはじまる」




漫画家・井上雄彦と詩人・伊藤比呂美の対談集。
伊藤比呂美さんというのはお名前を見たことがある程度で、あまり存じ上げなかったのですが、お子さんもいらっしゃる女性で詩人の方。
井上先生の漫画の熱烈なファンであるらしく、この対談が実現したそうです。
スラムダンクにはまってからの一年間、毎日(!)全巻を繰り返し読んでおられたというからすごい。
本書では主に「SLAM DUNK」と「バガボンド」について語りつくされています。



伊藤さんはやはり詩を書かれる方だけあって、とても感覚が鋭いというか、そんなとこまで訊いちゃう、語っちゃう!?という質問をズビズバと繰り広げられていて、
井上先生も「あれ、俺こんなことまで喋るつもりじゃなかったんだけどなあ」というところまで喋ってしまってる感じがすごくあります。
だからこの対談、めっちゃくちゃ面白い。



スラムダンクを現代の軍記物だと評したり、辻風黄平と龍胆の関係は愛し合っているけどセックスはしなくていいという、現代のわたしたちにとってある種理想の関係であると論じたりする一方で、
「小次郎を殺さないで」と言ったそばから「いややっぱり殺すべき」と手のひら返したり、三井の名前の由来(お酒の銘柄らしいです)を聞いて「聞かなきゃよかったー」と残念がったり、伊藤さんという人間の面白さに目が釘付けでした。
切れ味鋭いところと、どこにでもいそうなおばちゃんぽさとが同居している…。伊藤さんってどういう人なんだ…。作品をちょっと読んでみたくなりました。



「桜木花道」というネーミングの素晴らしさについては私も同感!
「あれが夕暮落葉(ゆうぐれおちば)とかだったらぜんぜん違う」と伊藤さんはおっしゃってましたが、「夕暮落葉」だと一気に西尾維新っぽくなる。なんでだろう(笑)



それから、「あとがきにかえて」という文章の中で伊藤さんが書いておられた一文、



 「ミッチーは、とてもエロい。」



を読んだとき、「おお…う」みたいな感じで、ものすごく腑に落ちてしまいました(笑)
そうかー、三井はバスケ技術はすごいけど選手としてのブランクがあってスタミナがないから、試合後半とかになると他の皆より早くバテバテになって、尋常じゃない量の汗はかくし息も絶え絶えだし(それなのに3Pシュートはバッチリきめたりするし)、
そんな姿に「キュン」となる気持ちというのは、あれはエロスだったのか!!
ボロボロになりながら戦う男の弱さ(とその中の強さ)に、いつだって女はヤられるわけで…(そして「もうやめてー!」とすがる女を振り切って戦いに赴くという、男側のロマンもあるんだろうなあ、ミッチーにヒロイン的存在はいなかったけど)



そんな感じで、井上漫画の深読みや裏話を楽しめると同時に、伊藤比呂美って何者?という印象を強く残す一冊でした(笑)
2008年刊なのでわりと前に出た本ですが、まだ知らない方は読んでみて損ナシだと思います。



いま猛烈にスラムダンクを読み返したい! 花道の「大好きです!」を見たいよう。
バガボンドも途中までで止まっちゃってるので、早く追いつきたいです。でも完結してからのほうがいいかな?



 



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