加藤治郎「環状線のモンスター 加藤治郎歌集」

  おそらくは電子メールで来るだろう二〇一〇年春の赤紙 なんとなく図書館で借りてみた歌集。覚え書きとして。   噴水の中から水が伸び上がり春の少女はソックスをはく カーテンのちかくでメールをうっているそんなまひるのありようだった スリッパを履いたまま眼を閉じているきみを抱きしめてゆうやみのなか 「あすか」というタイトルの連作ではなんとなく、少し前に読んだ「センネ…

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ふたたび出会う ~長野まゆみ「改造版 少年アリス」

長野まゆみについて書くと、長くなる。 しかも夜中に書いた日記みたいにひどくこっ恥ずかしいものになってしまうので、ブログに載せるのは止しておいて、 今回読んだものに限っての感想を書きます。 でもいつか、夜中の日記みたくこっ恥ずかしいそれを人の目にさらせるように、書き直せたらなあと思います…。 とにもかくにも、高校生のときに初めて読んだ長野作品が、氏のデビュー作である無印版の…

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エリンの生 ~上橋菜穂子「獣の奏者」4 完結編

 「わたしがしてきたことには、なにか意味があるのかしら。わたしは、なにか、できたのかしら」   イアルは、答える言葉を持たぬまま、ただ、妻を見つめていた。   エリンもまた、その問いには答えなどないのだと思いながら、薄青い空を見ていた。   かけがえのない時が、とどめようもなく過ぎていくことを感じながら、二人は長いこと秋の野に座り、空を見上げていた。 もう一字一句…

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激動の道 ~上橋菜穂子「獣の奏者」3 探求編

上橋菜穂子さんの紡ぐ物語に触れるとき、私の心はつねに歓喜に奮えている。 3巻も本当に…すごい、すごかったです。  「この地図には、多くの物語があるのよ」   クリウは、ささやくように言った。  「この壁に飾られるまでに、数奇な運命を辿ってきたの」 この三行だけで満たされる。 これは本筋にはまったく関係のない部分で、その運命についても特に語られずそれっきりなのだけど…

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そんなあなたが ~山下哲「カワイイもの好きな人々。(ただし、おじさんの部)」

たとえば、「動眼」(手芸品店で売っている動く目玉パーツのこと)。 たとえば、「ピリ豆」という名のついたチンパンジーの人形。 たとえば、小鳥を始めとした冬毛の動物たち。 たとえば、ウサギ。ブライス。こけし。 本書に出てくるものたちは、みんなカワイイ。10人中7~8人ぐらいは間違いなくカワイイと言うでしょう。 でもこの本で一番カワイイものは、それらを愛でるおじさんたちの姿で…

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