【抜粋】米澤穂信「さよなら妖精」

 糢糊とした記憶の中に、いくつか鮮明なシーンがある。覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』、そして紫陽花。それらを光源として見える範囲を広げるように、少しずつ過ぎた日を思い出していく。いま思い出した、あのひとは美しかった。だがなぜそれをいままで忘れていたかといえば、あのひとはその姿よりも価値のあるものを見せてくれたからだ。  ……十五ヶ月前、藤…

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「山頭火 句集(二)」

山頭火句集〈2〉 (山頭火文庫) わかれて遠い人を、佃煮を、煮る そこに月を死のまへにおく だまつてあそぶ鳥の一羽が花のなか 読んですぐの今のうちに、覚え書きとして。 意味を理解するより先に、イメージだけがすいっとやってきて頭の中に入ってくるような句にしびれます。 「だまつてあそぶ~」の句は、とっても愛らしい。愛らしい、と思ってそれを見ている山頭火の心が伝…

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あすはあの山こえて行かう ~「山頭火 句集(一)」

「山頭火文庫」なんてのがあったんですね…。 種田山頭火といえば、国語の教科書の俳句の単元の最後のほうに、こんな自由に俳句をよんだ人もいるんですよーという感じで紹介されていて、「分け入つても分け入つても青い山」「うしろすがたのしぐれてゆくか」などの有名な作品を見て、へーこれも俳句のうちに入るんだ、と面白く思ってたよ程度の認識です。 どういう人なのかはあまり知らないけど、イメージ…

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奥深い ~寮美千子「小惑星美術館」

子どもの頃にこれを読みたかった。 強烈に鮮やかなイメージとして、幸福な読書体験として、記憶に残ったに違いない。 わりと前に返却期限がきて図書館に返してしまったので、この本はもう手元にありません。なのであらすじはアマゾンさんから引っぱらせていただきます↓ 遠足の朝、ユーリはオートバイにはねられて銀河盤に衝突する。気がつくと、地面が空までめくれあがった不思議な光景の中に…

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CDショップに死神 ~伊坂幸太郎「死神の精度」

映画を観る前に再読、間に合った~。 ハードカバーの装丁もカッコ良かったけど、文庫版の表紙もカッコ良い。クール! お洒落! 基本カラーが青なのは「雨」の青なのかなぁ。 主人公の名は千葉。職業は「死神」。 これから死ぬ予定の人間を一週間調査し、「可」か「見送り」かの判断をくだすのが仕事。 何よりも大好きなのは、人間の作ったミュージック。CDショップが行きつけの場所。 重度…

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