人生は即興芝居 ~恩田陸「猫と針」

「こんなふうに、誰にも気付かれず、みんなに見過ごされて、なかったことになって忘れられていくことってどのくらいあるんだろうね。」 「人は、その場にいない人の話をする。」 喪服を着た男女5人が部屋の中で話をしている。 彼らは葬式帰りであるらしい。彼らは30代で、高校時代の同級生であるらしい。 死んだのはやはり彼らの同級生であるらしい。彼らが話しているのは、その場にいない人の話…

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放課後は名前を呼んで ~辻村深月「名前探しの放課後」上・下

他人からすればちっぽけなことに対して、びっくりするほど落ち込んでしまう夜のこと。 思うだけで涙が出るくらい大事な人のこと。大事な人の期待に応えられない悲しみのこと。 教室での、自分の立ち位置、棲み分け。逃げ続けることの楽さと息苦しさ。 他人と関わり、影響を与え合うことの幸福。 辻村深月の小説の魅力は、ミステリ的な展開よりもまず、その感受性の豊かさが第一なのだと思っています…

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虚構が私を見つめる ~恩田陸「中庭の出来事」

またもや恩田陸に幻惑されっぱなし。 タイトルどおり、出来事はすべて中庭で起こる。 脚本家の死。女優の死。若い娘の死。 役者によって演じられる芝居が繰り返し挿入され、何重もの入れ子構造になっていて、何が現実なのか、何が虚構なのかが曖昧になっていく。 ネタバレになるのであまり内容には触れられませんが… 読んでいくうちに、頭がどんどん混乱していった。 気軽に一気読み…

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そうなったらもう、踊るしかない。 ~岸本佐知子「ねにもつタイプ」

ただものではないと思った岸本佐知子さん(本業は翻訳家)のエッセイ、第2弾。 これも図書館で予約していた。 しかも今回は装丁&イラストがクラフト・エヴィング商會! 最高じゃないか。 最高じゃないか。 感想は第1弾エッセイ「気になる部分」とだいたい同じです。 が、これだけではあんまりなので、本作で気になった部分を列挙。 ・私は「気がつかない星人」であるこ…

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少年たちの昼と夜 ~恩田陸「ネバーランド」

恩田陸の文章は何度もたくさん読んでいるから、しっくり来すぎて、自分の血肉になりすぎていて、逆に鼻についたりしてきたのだが、やっぱり何度も読んでしまう。ああ。 ずいぶん前にドラマ化もされているこの「ネバーランド」は、タイトルの示すとおり、お話の中には存在しているけれど現実にはどこにも存在しないような、「架空の国(第七章のタイトル)」の物語である。 冬休み中の名門男子校の寮が舞台で、居残…

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