物語の予感 ~恩田陸「いのちのパレード」

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お久しぶりの恩田陸。今回は短編集。
図書館で予約してたのですが、思ったよりも早く順番が回ってきました。


恩田陸の短編は、まるで予告編のようだなぁと思う。
「映画は予告編が一番面白い」というのはよく使われる言い回しで、私もある意味ではその意見に賛成です。
何故かというと、予告編には「予感」が存在するからだと思う。
小出しにされるエピソードから、シーンの断片から、印象的な台詞から、そこに隠されていてまだ見ることのできない大きな物語を想像し、胸のワクワクが止まらなくなる。
実際の本編が、期待通りか、その反対かは、作品によるけれど(笑)。
予告編というものは、おおむね面白いものなのです。その映画を観てもらうに作ってるものなんだから当たり前といえば当たり前なのですが。


恩田さんの短編には、いまだ語られない部分の予感に満ちた、たくらみのようなものを感じることが多い。
一応、短いお話として完結はしてるのだけど、いやぁまだあるんでしょうその先が、まだ言ってないことがあるでしょうホラ、と詰め寄りたくなるような。
物語を書き始める前に、恩田さんはまず「その物語のポスター(手書き)を作る(まるで映画の宣伝ポスターのように)」のだというエピソードを知ったときは、さもありなんと思った。(今でも毎回そんなことされてるんだろうか…こんなに多作なのだし、さすがにムリかな?)


以前に読んだ、同じく短編集の「朝日のようにさわやかに」のときは、全部の感想を書けなかったので、今回はがんばってすべての話に一言感想をつけました。
長いので興味のある方だけどうぞ↓・「観光旅行」
パレードの始まりは奇妙な噂のある村の話から。
シュールな話でオチもちょっと空恐ろしいのだけど、明らかにギャグではないかという描写がときどき出てきたりするのが面白かった。
なんとなく「世にも奇妙な物語」でやってそうな話だなと思った。


・「スペインの苔」
一番意味がわからなくて怖かった話。
他人事のように語られる客観的な口調が怖い。


・「蝶遣いと春、そして夏」
一番好きかもしれない話。
「春は死者の季節である。」という冒頭の一行目から、美しく悲しいイメージの奔流にふわぁーっと包まれるような感じ。
花のように咲き誇る死者。弔いに訪れる遺族と、それを導く蝶遣い。蝶遣いになるための条件。悲しいけれど、その世界はやっぱりとても美しい。


・「橋」
緊張状態にある東と西の間に架かる橋を、一般市民が当番制で見張りをする話。
途中、結構緊迫した事態になったりもするけど、全体的なトーンはのどかなのがアンバランスで妙。
鮎子姐さん、社会人野球やってたってことは…えーっとつまり……


・「蛇と虹」
ちょうど今読んでいる「不思議な少年」という漫画にも、同じ題材の話が出てきたので興味深かった。
こういうことは本当にありそうな気がする。大人が知らないだけで。だって赤ちゃんは喋れませんから。


・「夕飯は七時」
前言撤回! やっぱりこっちが一番好き!(笑)
この話をぜひ絵本で読みたい。なんというかこう、ダイナミックな絵を描く絵本作家さんで。
見られたらやばいときにおじいちゃんが絶対にこちらを振り返らないところとか、すごく絵本の世界っぽいと思うんだけど。


・「隙間」
ホラーに欠かせないのはチラリズム。
見えそうで見えない、わかりそうでわからないのが一番怖い。


・「当籤者」
あまりにも大きな幸運は、不運なことでもあるよなぁ。
恵まれすぎても大変だ、程々がいい。


・「かたつむり注意報」
か…かたつむり注意報―――!? しかも家よりも大きいかたつむり!?
これぞ「奇想」って感じ。夜更かしを許された日の子どもみたいに、なんかわからんけど血が騒ぐ。


・「あなたの善良なる教え子より」
自分で「善良」って言ってるのがなんともなぁだけど。
罪なのか善なのか、それを決められるのは私たちではないのではないだろうか。それとも反対に、自分自身にしか決められないことなのではないだろうか。
私には答えられません。それを考えなくちゃならないような状況を、この先味わうことのないよう祈ります。


・「エンドマークまでご一緒に」
英訳題は"IT'S HARD BEING A MUSICAL STAR"……つまりそんなお話。
ミュージカルに対するツッコミを小説でやりつつ、でも作中で言及されてるように、なんだかんだでミュージカルが好きなんだなというのがよくわかる話でした。


・「走り続けよ、ひとすじの煙となるまで」
タイトルがかっこいい。
そして内容も、ヘンテコだけどかっこよかった。


・「SUGOROKU」
「振り出しに戻る」の非情さは異常です。
人生ですごろくなんてやりたくないよ…ところで「人生ゲーム」なんてのが昔流行ってたなぁ…。


・「いのちのパレード」
生き物たちが延々とどこかに向かって行進をしているだけの話。
ものすごい寓意が込められているような気がする。
取り残された我々はどうなるんでしょう…。


・「夜想曲」
星新一チックな題材がちりばめられたこの小品にてパレードは終了。
主人を偲んで涙を流すようなロボットなら、きっと素敵なものを書けるだろう。



思ったより大変でした(笑)。ふう疲れた。


そういえば、昨年の夏に上演されて私も観に行った、恩田さん初めての戯曲「猫と針」が出版されました! わーい!
ぜひとも購……いや、図書館で予約しよっと!
ハードカバーの本は買いません。このポリシーは曲げられないぜ。ポリシーっていうか、単に貧乏なだけですが…!

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