まだ走り出してもいないのに ~佐藤多佳子「一瞬の風になれ」1~2

0410

もう図書館に返さなきゃいけないので、ひとまず第一部「イチニツイテ」と第二部「ヨウイ」の感想。


漫画版が面白かったし、コメントでお勧めもいただいていたので、原作小説を(今さら)読んでみました。
ほぼ予約待ち人数なしで借りることができた。もうブームは一段落したのかな…。
予約限度冊数いっぱいになっちゃってるので、3を新しく予約することができず、しばらくおあずけです。
有○天家族とか吉○手引草とか、どんだけ待たすんだってぐらい待ってるんだけど…まだですかー。


主人公である新二の周りには、2人の天才がいる。サッカー選手の兄・健一と、短距離走者の親友・連だ。新二は兄への複雑な想いからサッカーを諦めるが、連の美しい走りに導かれ、スプリンターの道を歩むことになる。夢は、ひとつ。どこまでも速くなること。信じ合える仲間、強力なライバル、気になる異性。神奈川県の高校陸上部を舞台に、新二の新たな挑戦が始まった――。(アマゾンからそのまま引用)


佐藤多佳子さんの作品なら「しゃべれども しゃべれども」を読んだことがあるのだけど、そちらの主人公三つ葉と、この新二には何か通じるものがあるように感じた。
なんだろう、ひたむきで、努力家で、語り口があっけらかんとしていて、マジメだけど堅物ではないところ。
うまく言えないけど、佐藤さんはこういうタイプの主人公が好きなのかなぁ。
顔が可愛いとかそういうのはまあ、知らなくてもよかったけど…。


新二の語り口にうまくのれなければ、読み進めるのはなかなか難しそう。
逆にのりだすと止まらずすいすい読める。とにかく彼は素直だ。自分の思ったことを包み隠さず読者に打ち明けてくれる。
天才な兄貴・健ちゃんへの誇らしさと劣等感とか、走ることをとことん極めようとする姿勢とか、谷口若菜に対する淡い恋心とか(甘ずっぱい!)、連と対等でいたいという気持ちとか。


海老名のトラックの青いタータンが川の水みたいで涼しげで好き、と谷口が言ってたけど、それって2の表紙のことかな。
成程その部分を読むまで、私はこの表紙を海だと思ってた。川じゃなくて海だけど。


短距離走だから、走ってる間はそれこそ一瞬のことで。
時間を引きのばしたりはしなくて、二行とか三行で終わっちゃう。四継リレーですら一瞬のこと。
それが返って臨場感たっぷりで、私はむちゃくちゃ鈍足なので想像するしかないんだけど、こんな感じなのかもなぁ。きっと身体が走り方を覚えてるんだ。


だらだらしてるとかいうわけじゃないけど、陸上に打ちこむ新二の日常がこのまま淡々と続くのかと思っていたから、2での後半の展開は不意打ちをくらって、ボロボロと泣いてしまった。
ほんとになんであんなに泣いたのか不思議。心が弱っていたのかしら。
でも家族のああいう状況は本当につらい。もし自分だったらと想像するだけでつらい。
新二に陸上があって、仲間がいて、心底よかったなと思いました。


合宿をトンズラしようとした連に対し、「俺は、おまえがみっともないのはイヤなんだっ!」と言い放ったり、「なんで、健ちゃんなんだ。俺ならよかったんだ」と本心から思った新二は、「自分だけ」ではいられない人間なんだなと思う。
その背中を追いかけたくなる誰か、並んで競い合いたい誰かがいるからこそ、最高の瞬間に向かって努力できるんだと。


すっごい親バカで子煩悩な神谷家のお母さんが、私は大好きだ。
息子の具合が悪くなると自分まで寝込んじゃうようなお母さん。
「うちの子が、うちの子が」ばっかりで周りに迷惑かけるような親は論外だけど、このお母さんはとっても可愛らしいと思う。
子どもを持つとしたらこれくらい「子ども命」になりたいものだ。


3を読んだあとで、もう一度総括的な感想を書こうと思います。
記事タイトルは福満しげゆき氏の「まだ旅立ってもいないのに」(未読)のパクリです…
いや、めっちゃ走ってはいるんだけど。だってまだ第三部の「ドン」までいってないんだもん。

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