もう諦めない ~天乃タカ「本の元の穴の中」5巻

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そんなに長くは続かないだろうな…みたいなことを前に書いてたんだけど、ほんとに5巻で終わってしまった…。
長く引きのばすようなタイプの話ではないけど、もうちょっとの間ぐらい彼らの旅を見ていたかったなあ。


頭に角を持つ「鬼」のキイチは、「樹」となって世界を救うために犠牲にならねばならない。
そのため追われる身となった一行が向かった水の本処で、ハナもまた世界を支える「樹」の代わりになれるのだということが明らかになる。
その事実に動揺していたキイチは、そこで同じ角を持つ鬼の少女・美樹と出会う。
本処の、天守の、そして元太郎の出した結論は? キイチとハナの運命は?
本を巡る絆の物語、とうとう完結です。


自分が犠牲になるか、ハナちゃんが犠牲になるか、それとも第三の道に望みをかけるのか。
こんなに小さいのに、こんなに重い選択を迫られるキイチがかわいそうで、「お前一人のわがままで世界を滅ぼすのか?」なんて残酷な言葉をつきつけられるのが辛くて辛くて。
どうなることかと思ってましたが、ご都合主義な部分もなくはなかったけれど、大団円でおさまってくれて本当に良かったと思います。


樹になるために自ら穴へ飛び込んだキイチに向かって、サメが「行くな」と叫ぶところでは、ついに…!と熱いものが込み上げてきた。
やっと本音が出たんだね…。
キイチを個人ではなく、「鬼」としてしか見ていなかった頃、話をしてその心に触れることで、次第にキイチという人間を気にし始めた頃。天守の誇りが何よりも大切なサメは、いつだって頑なで、自分が一度信じたことを曲げようとはしなくて。
そのサメが最後に選んだのは、伸ばされたキイチの手をつかむことだったんだね。
本当のサメは、キイチに樹になって欲しくなかったのだ。ああ、うれしい。


そして、元太郎さんも。
旅に同行すると言い出したキイチを、最初は足手まといとしか思っていなかったのに、行動をともにするうちに彼の純粋さを知り、強さを知り、ときには自らを省み、危機には血相を変え、顔をぐしゃぐしゃにしてその無事を喜ぶほど、元太郎さんにとって愛しい存在にキイチはいつの間にかなっていたんだなあ…。
元太郎さんは決して、「何でもできる賢い大人」ではなかった。力を制御できずに苦しみ、罪の重さに潰され、迷って、悩んで、大切なものをこぼしたくなくていつだって必死にあがいていた一人の人間でありました。そして、そのことがとても愛おしかった。
そんな元太郎さんも、物語の最後には安らぎを手にいれることができたんだと信じたい。
だって、昔と同じように手を添えて助けてくれたお父さんの、元太郎さんが見た幻かもしれない姿は、確かに笑っていたんだもの。
お父さんはきっと今も、ハナちゃんの中にいて元太郎さんを見守ってくれているもの。


ラストはページ数がもう少し欲しかった!
でも、作者側としては、大ゴマで見せたいところは全て見せた!描き切った! という感じなんだろうなとは思う。
その証拠に、加筆できるページ数がありながら、ラストを描き足す代わりにヒルと美樹のエピソードが描き下ろしされているし(美樹めっちゃかわいいな…)。
美樹たちはパッと出てきてすぐに退場してっちゃったので、描き残した部分もあったんでしょうね。
でもでも、見たかったんだ…。ガンちゃんとの再会とか、サメとキイチの友情の行方とか、ヒルのその後とか、○年後の元太郎さんとか(ほとんど今と変わらないだろうけど)…!
一コマだけだけど成長したハナちゃんの姿を見れて嬉しかったです。人間になれたんだねえぇ…(涙)


絵に惹かれて読み始めたこの「もとあな」でしたが、良い出会いでした。
こういう出会いがあるからやっぱり表紙買いってやってしまうのだよね。
天乃&タカ両先生の次回作は、いま旬の(笑)執事ものだそうなので、そちらのコミックスも楽しみに待ちたいと思います。



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