終わりは始まり ~恩田陸「エンド・ゲーム 常野物語」



怖かった。
恩田陸の小説はみんな怖い。
ものすごい怖がりのくせに、恩田陸の描く怖さだけはすすんで味わおうとする自分がよくわからない。


私たちは薄皮一枚で守られた世界に住んでいて、普段はそんなこと意識せずに生活しているけれど、ふとした時にその薄皮を透かし見てみると、おぞましいもの、優しくないもの、残酷なものがひそんでいることに気づく。あるいはそれは、自分自身の醜さであったりする。
見ないだけ、考えないだけで、それは常にそこに在る。
そういう、「知らなければよかった」「知らなかった頃にはもう戻れない」という類いの怖さ。
人は何故「怖いものを見たい」と思うんだろう?


『裏返す』『包む』『洗濯する』といった言葉がおそろしい意味を持つ物語。
登場人物たちが遡る、夢のような、記憶の中の無意識の世界で現れる、長い長い卓袱台に、こちらに背を向けて座っている老婆や、銀の輪回しをしている少年や、横木が×印に交差された鳥居や、窓も入口もない建物。
幼い時子の体験した出来事は、自分の目で見たわけじゃないのに、トラウマになってしまいそう。
「聖家族」なんて言葉がポンと出てくるような、輝かしく美しい、それなのにとてつもなく不穏なラスト。


うん。恩田小説を一言で表すなら、私はやっぱり「不穏」を選ぶ。
穏やかでない胸のざわめきは、良くも悪くも予感につながっていく。
物語の予感に。


「誰も 見たくないものを 見たくないからだ」
なるしまゆりの漫画の中にこういう一文があったのだけど。(うろ覚えですみません)
読み終わったとき、この一文をふと思い出した。
(上に書いた「薄皮云々」というのも、なるしま漫画に出てきた表現だったような気がします)



なんだか全然内容の紹介になってなくてごめんなさい。
特殊な力を持った一族の戦いを描いたシリーズの中の一作です。
サイキック物、と呼んだらいいのかな…。それともファンタジー?
同シリーズの他作品(「光の帝国」「蒲公英草紙」)も以前読んでるはずなんだけど、どんな話だったかなぜか記憶がない。
『裏返す』っていう言葉がすごく怖かったのだけ覚えてるんだけど。
恩田小説は少しごぶさただったので、これを機に再読してみようかな。

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