まことに結構なお点前で ~西森博之「お茶にごす。」11巻

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表紙……



表紙……!!



最終巻の表紙は全員集合的な絵か、そうでなかったらまークンと部長の2ショットかな…と予想はしてたんですけど、
まさか「ちんまり」でくるとは想像していませんでした。のおおお…身悶える…!
中身も名シーンいっぱいで、どこから語ればいいのか迷うくらい。
最終巻。大事に、大事に、読みました。



すごく長くなったので記事を畳みます。長文注意です。




 

第100服、ブルーへのフォローがされていてうれしかった…(最終服で出番がなかったのはさびしいけど)
智花ちゃんの「フカブカー」がかわいかったです。
「じゃあ、自然に言おう!」「それじゃ言えないのよ…」「じゃあ、不自然にいえば?」のやりとりに笑った。話噛み合っとらん!
そして、沢村くんの「渡せなかった」思い出は、わかりすぎて涙が出ました(マジで)。
なんでなんだろーね、なんで渡せないんだろーねアレ…(涙)西森先生もそういう経験があったんでしょうか? でなければこんなにリアルに気の小さい人間の心理を描けないと思う…



卒業式が近づき、部長とのお別れが刻々と迫っている季節。
部長と距離を置いたままのまークンと、その理由がわかっているから何も言わずにいる部長さん。
一緒に帰っているのに、振り向かないままの会話が切なくて、胸がぎゅーんと痛くなりました。
それなのに、足を滑らせた部長を真っ先に支えるのもまークンで。
雪の降り出した通学路を、友だちみんなではしゃぎながら歩いて帰る。二度と来ないこの日を、奇跡のように切り取った一瞬が、本当に美しくてまた涙が出そうになった。
そして、卒業式の日がやってくる。



卓ちゃん、最後にまさかの春の訪れが(笑)いやーよかったね。
ところで卓ちゃん、「学校一の変な人」という称号持ってたんですね。確かにまあ、変な人だった。初対面の怖い人(まークン)に「きいてないよ~」とかやれるくらいだもんね!(笑)
鈴木もチラッと出てきたり。そうか、こいつも3年だったかー。



ボロボロ泣いて何言ってるかわかんない夏帆ちゃんがかわいい。タマちゃんも奥ちゃんもヒロシもクラスの男子も、それぞれのやり方で部長とお別れをするのに、まークンは近づかない。遠くから部長の姿を目で追うだけ。


「なんか言わねーのか?」
「何も言えない。」


卒業式が終わって、買い物帰りにふたたび校舎を見つめるまークン。
そこに、私服姿の部長さんが現れる。
偶然出会ったように描かれているけど、私はきっと偶然じゃないと思う。部長さんのほうが、まークンを見つけたんだと思う。


「あまり無理しないでね。」


自分の巻いていたマフラーをまークンにかけてあげて、その一言だけ残して部長さんは去っていく。何もかもわかっているから、それ以外の言葉をみんな呑みこんで、ただ労わりの言葉だけを部長さんはかける。
去っていく部長さんの後ろ姿を、まークンは見つめている。小さくなって見えなくなるまで、ずっとずっと見つめ続ける。何も言わず、何も言えずに。
学生の頃は毎年、大人になってからも何度も繰り返していく別れ。何度味わっても、慣れることはありません。
そんな物寂しさを追体験させられた第103服「卒業」でした…。



部長が卒業しても、高校生活は続きます。茶道部も然り。
というわけで、ここからはまた日常生活の描写が始まる。
新入部員の勧誘とかみんなでやるわけですが、1年前と比較すると面白いね。
まークンも自分でちゃんとお茶を点てられるようになったし。
「フフフ…ここにサインしてね――[我と契約せよ…]」([ ]内はイメージ音声です)とか、お約束の悪魔ネタが久々で楽しかったですが。
新入部員のヒナちゃんの存在が、1年前からの変化を表す役割を果たしているなーと思う。(そのために登場させたのかな)
最初こそ「やくざの人だ!!」ってなるけど、その誤解がとけてからはすぐに「まーサンて優しいですよね!」なんて言葉がナチュラルに出てくるのです。くー、まークンの努力は実ってるよ!



しかし、イメチェンしたまークン怖すぎるな…(笑)学ランの前ホック留めるから、余計に怖さが増すんだよ!
ヤーマダの髪型をしたまークン…というイメージ画像も面白すぎました。み、みんな想像したくないんだな(笑)



まークンのじいちゃんのエピソードも、少しですが触れられてました。
ヤーマダもお世話になってたんだね。
このページ数でこの情報量。西森先生のネーム構成力ってほんとスゴイと思います。
子どもが川に落ちて、二人して助けに飛び込むくだりもよかった。まークンとヤーマダってこーいうコンビなんだよね。



いつもと変わらぬ日々が続いているかのように見えて、どこか無理しているまークンに夏帆ちゃんは気づいていた。
部長に似た人を見かけて動揺する自分。その自分を消そうとするかのように、川面に映る自分に向かって石を振り下ろすまークン。
そんなまークンに向かって、夏帆ちゃんが投げつけた言葉。


「どっかの誰かに任せるのか!
そんなのがオマエの優しさか!」



この108服から最終服にかけての1シーンが、本当に素晴らしかった。
座りこむまークンの背中、風を切る土手の描写。一目散に駆け降りていったのであろう夏帆ちゃん。
いつもみたいに見下すようだったり凶暴だったりしない、真剣な目で、少し乱暴な口調で、まっすぐまークンに向けて放った言葉の数々は、あえて引用しません。
一度走り出して、でもすぐに戻ってくるまークン。夏帆ちゃんに「ありがとう」を言うためだけに。
立ち止まって、遠くから大声で言うのでも事足りたはずなのに、わざわざ戻るんですよね。そこが好き。
きっと、近くで顔を見て、ちゃんと伝えたかったんだろうな。



ラストに向けて、夏帆ちゃんだけが少し髪も伸びて印象が変わっています。
内面的にも一番変化したのは夏帆ちゃんなのかな? とちょっと思いかけたんだけど、そんなことないや、と思い直しました。
夏帆ちゃんは最初からこうだったよ。1巻で、部を辞めるようにまークンに伝えに行ったヤーマダを追いかけたときも、全力疾走だったよね。



まークンの背中を押したのは夏帆ちゃんだったけど、ヤーマダもヤーマダのやり方で、まークンに対して誠実だったと思う。
決断したまークンの気持ちを認めて、そばにい続けてやる山田。背中を蹴り飛ばして、ホントの望みに向かわせてやる夏帆。
どちらも得難い友情のかたちなんだと思います。
コミカルに描かれていたけど、最後にヤーマダが流した涙はとても尊いものだよね。



そして、部長の元へ向かったまークンは、そして……
このあとは、作品を読んでのお楽しみ。



「いやー、それが昨日まークンがさ――」


ヤーマダの台詞の続きが気になるけれど、聞くのは野暮ってェモンでしょう。
タイトル通り文字通り、「お茶をにごして」の大団円。
何てお見事。何て素敵な余韻なんだろう。
もう彼らに会えないなんてとっても寂しいけれど、会えたことのほうが嬉しいから、悲しいなんて言いません。
そう、これが「一期一会」というものですね。



まことに結構な、お点前でございました。
ありがとう、西森先生!


 


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