エリンの生 ~上橋菜穂子「獣の奏者」4 完結編




 「わたしがしてきたことには、なにか意味があるのかしら。わたしは、なにか、できたのかしら」
  イアルは、答える言葉を持たぬまま、ただ、妻を見つめていた。
  エリンもまた、その問いには答えなどないのだと思いながら、薄青い空を見ていた。

  かけがえのない時が、とどめようもなく過ぎていくことを感じながら、二人は長いこと秋の野に座り、空を見上げていた。




もう一字一句が素晴らしい。



映像が瞬時に頭の中に流れ込んでくる。
映像っていうか、世界が。
ことばがそのまま世界となって本から飛び出して、両耳のあたりでぶわっ…と左右に分かれて包まれる感じ。
私はいま、ものすごくおおきく厳しくあたたかい何かに包まれているぞ。
そんな感じ。



ジェシの入舎の式のためにイアルが帰ってきてくれたこと。金糸を買いに行ったこと。二人で秋の空を見たこと。人は、自分が何をして、どんな結果を招くのかを知らなければならないというエリンの言葉。セィミヤの覚悟。飛び去っていく王獣の優美で荘厳な体。アルに乗ってエリンを助けに来るジェシが幼いエリンの姿と重なったこと。すれ違う母の顔。
そんなことたちが、映画やアニメのクライマックスの走馬灯のように頭を巡る。



うまく書けない。うまく書けない。
胸がいっぱいでうまく書けない。



どうして、どうしてこんな物語を書けるの? 上橋さん。
読めてよかった。読めてよかった。
読めて本当によかった。



そして私は、イアルがちょっとどうかと思うくらい好きです。冬の木立のようなひと。




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